約束〜二人で帰ろう〜
私が情報を収集できるのは、耳から入ってくる音しかない。私は恐怖の中、じっと耳をすましていた。

その時、トントンと体に振動が伝わってきた。この振動の正体を察し、私は焦る。この振動は、高速道路で路面にある白い横線を車両が乗り越えた時に伝わるものかもしれない。

この車は高速道路を走っている可能性が高い。つまり、私は他県に監禁されるということ……。

いや、監禁をせずに私を殺して山の中にでも埋めるのかもしれない。犯人の目的なんて知らないけど、恐怖しかない。

数十分走ったのか、それとも数時間走ったのか、時間の感覚がわからない。

車が止まり、後部座席のドアが開く。外の冷たい風が私の頰に触れた。

誰が私の体を掴んでいるのか、わからない。でも私は車から降ろされ、建物の中へ連れて行かれた。おそらく犯人の自宅だろう。靴を脱がされ、足が触れたのは恐らくフローリングの床だから……。

しばらく歩いた後、私は部屋に連れてこられ、初めて目隠しを外してもらえた。時計しかない殺風景な部屋。
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