花のようなる愛しいあなた
◇大坂での生活◇
「改めて、すごいお部屋だわね」
多喜は感嘆の声をあげた。
千姫の部屋は大坂城本丸奥の本当に一番奥の落ち着いた場所にあり、障子を開けると美しい中庭が楽しめる。
陽当たりも良好で風通しも良く気持ちの良い空間だ。
姫の部屋に隣接して多喜と松母娘の部屋が設けてある。
ふすまを開ければ一緒に眠れるようになっている。
美しい調度品が飾られ、美しい着物が所狭しと準備されていた。
秀吉は女性を飾ることが好きだった。
着物やアクセサリーや化粧品をじゃんじゃん買った。
その量が半端なかったため、侍女に至るまで煌びやかな着物を皆着るようになった。
それが大坂城の慣わしとして今では常識化している。
一方、家康はケチで有名だ。
着れればそれで良い、豪奢なものなど必要ないという考えだったので多喜や松は必要最低限の物しか持っていないし、足袋を履いたくらいで「贅沢だ」と怒られるような環境だった。
千姫ですら普段着は3着回しで着ていたくらいだ。
それがこの大坂では末席の侍女ですら江戸の姫君よりも良い着物を着て生活している。
千姫は今まで見たこともないような煌びやかな衣装にわくわくが止まらない。
多喜も松もドレスアップして朝食に向かう。
大坂城の一日は、まず朝ごはんから始まる。
江戸では姫たちはそれぞれの乳母と乳母の家族と一緒に食事を摂っていた。
両親や他の妹たちを見る機会はあまりなかった。
大坂では淀殿の意向により、みんなでご飯を食べる。
みんなとは、淀殿、その乳母である大蔵卿の局ことおばば様、秀頼、その乳母である宮内卿の局こと美也、美也の息子で秀頼の付き人である木村重成、千姫、その乳母である多喜、多喜の娘で千姫の侍女の松。
そして豊臣家長女の完姫とその侍女の由衣が集まった。
「改めて初めまして、お千ちゃん。
会いたかったわ」
「私もです、お姉さま」
完姫とは江と死別した前の夫の羽柴秀勝との間の娘で、江が徳川秀忠に再嫁する際、淀殿が引き取って長女として育てている。
秀頼の一つ上でちょっと気の強そうな美人さんである。
千姫にとっては、父違いの姉ということになり、秀頼にとっては義理の姉であると同時に羽柴秀勝は秀吉の甥であるため、父方のいとこであり母方のいとこでもあるなかなか不思議な関係であった。
大人数の朝食に千姫は緊張したが、それは杞憂に終わった。
ずっとおばば様や美也が面白おかしいことばかり話してて、
完子や重成が「いやいや、ちょっと待って?」とか「うるさいよ!」などとツッコミを入れる。
そのやり取りに秀頼が笑って、淀殿はそれを見て嬉しそうにしている。
食事も品数が多くどれも美味しいものだった。
「喜んでもらえて良かったわ」
淀殿はほっとした様子で微笑んだ。
多喜は感嘆の声をあげた。
千姫の部屋は大坂城本丸奥の本当に一番奥の落ち着いた場所にあり、障子を開けると美しい中庭が楽しめる。
陽当たりも良好で風通しも良く気持ちの良い空間だ。
姫の部屋に隣接して多喜と松母娘の部屋が設けてある。
ふすまを開ければ一緒に眠れるようになっている。
美しい調度品が飾られ、美しい着物が所狭しと準備されていた。
秀吉は女性を飾ることが好きだった。
着物やアクセサリーや化粧品をじゃんじゃん買った。
その量が半端なかったため、侍女に至るまで煌びやかな着物を皆着るようになった。
それが大坂城の慣わしとして今では常識化している。
一方、家康はケチで有名だ。
着れればそれで良い、豪奢なものなど必要ないという考えだったので多喜や松は必要最低限の物しか持っていないし、足袋を履いたくらいで「贅沢だ」と怒られるような環境だった。
千姫ですら普段着は3着回しで着ていたくらいだ。
それがこの大坂では末席の侍女ですら江戸の姫君よりも良い着物を着て生活している。
千姫は今まで見たこともないような煌びやかな衣装にわくわくが止まらない。
多喜も松もドレスアップして朝食に向かう。
大坂城の一日は、まず朝ごはんから始まる。
江戸では姫たちはそれぞれの乳母と乳母の家族と一緒に食事を摂っていた。
両親や他の妹たちを見る機会はあまりなかった。
大坂では淀殿の意向により、みんなでご飯を食べる。
みんなとは、淀殿、その乳母である大蔵卿の局ことおばば様、秀頼、その乳母である宮内卿の局こと美也、美也の息子で秀頼の付き人である木村重成、千姫、その乳母である多喜、多喜の娘で千姫の侍女の松。
そして豊臣家長女の完姫とその侍女の由衣が集まった。
「改めて初めまして、お千ちゃん。
会いたかったわ」
「私もです、お姉さま」
完姫とは江と死別した前の夫の羽柴秀勝との間の娘で、江が徳川秀忠に再嫁する際、淀殿が引き取って長女として育てている。
秀頼の一つ上でちょっと気の強そうな美人さんである。
千姫にとっては、父違いの姉ということになり、秀頼にとっては義理の姉であると同時に羽柴秀勝は秀吉の甥であるため、父方のいとこであり母方のいとこでもあるなかなか不思議な関係であった。
大人数の朝食に千姫は緊張したが、それは杞憂に終わった。
ずっとおばば様や美也が面白おかしいことばかり話してて、
完子や重成が「いやいや、ちょっと待って?」とか「うるさいよ!」などとツッコミを入れる。
そのやり取りに秀頼が笑って、淀殿はそれを見て嬉しそうにしている。
食事も品数が多くどれも美味しいものだった。
「喜んでもらえて良かったわ」
淀殿はほっとした様子で微笑んだ。