花のようなる愛しいあなた
そんな時、福島殿が見舞いに訪れた。
彼は裏表があまりなくて信頼できる男だ。

「俺はあんまり深く考えるの苦手だから上手いこと言えねぇかも知れないけど、一応秀頼様より長く生きてるから何かアドバイスできることがあるかも知れねぇ!
悩みがあるなら他言はしねぇから、話してみてくんねぇか?」
福島殿は遠縁ではあるんだけれど、父親ってこんな感じなのかなぁという気がして、気がついたら色々話していた。

「もうすぐ、子供が産まれるそうだ」
予期しない返答に福島殿はしばらく固まっていた。
「ふぇ?
え?
あ、
おめでとうございます!」
「…めでたいんだろうか」
「そりゃ秀頼様の血を引くお子が産まれるのはめでたいでしょう!」
「そうだね…。
家のためにもなるし、僕に子種があることも証明された…」
浮かない僕の顔を見て福島殿は怪訝そうな表情を浮かべた。
「…母君はどなたで…?」
「よく、わからない」
「!!?」
「毎晩寝所に入ると誰かいる」
「……」
しばらく無言が続いた。

「千姫様はご存知なので?」
「言ってない。
…言えない」
福島殿の目が優しくて僕は話しにくいことも言ってしまう。
「言ったら彼女を失ってしまうかも知れないと…
そう思ったらどうしても」
「…お苦しいですね…」
福島は苦しそうに胸を押さえてボロボロと涙を流した。
「なぜあなたが…」
「こんな辛い事をさせるなんて…!!」
福島殿は僕の代わりに泣いて怒ってくれた。
「家のこともあるだろうけど
子作りってのは愛情あってのことだ…。
それをこんな…!」
「そう言ってくれてありがとう。
乳母たちに言ったら不思議そうな顔をされた。
こんなことで悩むのなんておかしいのかと、悩ましかった」
「そんなことねぇですよ…。
秀吉様だって沢山の側室がいましたが、あの方は全員の女を愛されてた…。
秀頼様も愛されてこの世にお産まれになったことも、どうか忘れないでいてくだせぇ」
「ありがとう…」

少し心が軽くなった時、予期しないことが起こった。
お千ちゃんが侍女のフリをして部屋にやって来たんだ。
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