花のようなる愛しいあなた
「体調はもう大丈夫なのかい?」
「うん、今は落ち着いてる。
…月のものが来る時って、貧血でめまいがしたりお腹が痛くなったりするものなんだって」
「そうなのか…大変だね…」
「秀頼くん、産まれた子とはもう会ったの?」
「ううん…まだ…」
「そうしたら、早く行ってあげないと!」
「でも…」
「お産の大変さは月のものなんかと比べ物にならないよ!
その女性もきっと秀頼くんに会いに来て欲しいと思う。
江母さまもそうだったけど、お産の時ってすごい不安で寂しいんだって。
父さまにそばにいて欲しいって言ってたの、覚えてる」
「…その女性もそうなのかな」
「一緒に行こう!」
2人はその側室の元へ行った。
秀頼が来ると知ってその部屋はバタバタしていた。
「…っ!
秀頼様…!!
こんな所までお越しくださいまして…」
その女性は起き上がり平伏しようとする。
「そのままでいい、起き上がらないで」
「…すみません…」
産後直後のその女性は顔色も悪くぐったりしていた。
そばにいた侍女たちがお子を連れてきた。
「おめでとうございます、お元気な若君でございます」
力強く泣く小さな命に秀頼は心を動かされたようだった。
「ありがとう…。
よく、こんな立派な子を産んでくだされた」
秀頼は小さな我が子を抱く。
そしてその女性を見て優しく微笑んだ。
「貴女も
命を賭けて尽くしてくれたのだな…。
こんな細い身体で
よく頑張ってくださった。
ありがとう…」
「勿体ないお言葉にございます…」
緊張してたその女性は、その時安堵の涙を流した。
千姫は静かにその場を離れる。
複雑だった。
まるで機械のように事務的に夜を共にしていた2人に情が通った瞬間だった。
「ずっと嫌われていると思っておりました」
「どうして…」
「貴方様はいつも遠くを見てらして、私のことなど一目とも見てくださらなかったので」
「……」
「仕方なく私と夜を過ごすのがお辛そうでした…。
申し訳ないと毎回そう思って…。
ですからお子が産まれても、
喜んでくださるか
会いに来てくださるか
不安でございました…」
「…すまない、千紘さん。
貴女の気持ちも考えず
辛い思いをさせてしまった」
そうだ、この女性には千紘という名前があった。
名前も感情もある一人の女性だ。
顔も名前も覚えようとしなかった僕は何て傲慢で酷い男なのだろう。
いや、千紘さんの名前に”千”の文字が入っているから意図的に覚えないようにしたのかもしれない。
どちらにせよ自分のことしか考えていなかった僕は何て未熟なんだろう。
「いえ、秀頼様のお立場を考えれば当然かもしれません。
けれど、これだけは知っておいて欲しいのです。
私はあなた様をお慕い申しております」
「…!」
「私だけではありません。
他の側室たちもみんな秀頼様をお慕いしております。
私たちが大坂にいるのは家の都合だけはないこと、知っておいてくださいませ」
「…僕は…」
「秀頼様は申し訳ないなんて思わないでくださいませ」
「……」
「なんて表情をなさるんですか。
貴方様には家を守る責務がございます。
私はその為にできる事をしたまでです。
嫌われてはいない…それだけで勿体ないことです」
「…ありがとう。
もう今日はゆっくり休んでください
また我が子を見に参ります」
秀頼の第一子は、国松と命名された。
「うん、今は落ち着いてる。
…月のものが来る時って、貧血でめまいがしたりお腹が痛くなったりするものなんだって」
「そうなのか…大変だね…」
「秀頼くん、産まれた子とはもう会ったの?」
「ううん…まだ…」
「そうしたら、早く行ってあげないと!」
「でも…」
「お産の大変さは月のものなんかと比べ物にならないよ!
その女性もきっと秀頼くんに会いに来て欲しいと思う。
江母さまもそうだったけど、お産の時ってすごい不安で寂しいんだって。
父さまにそばにいて欲しいって言ってたの、覚えてる」
「…その女性もそうなのかな」
「一緒に行こう!」
2人はその側室の元へ行った。
秀頼が来ると知ってその部屋はバタバタしていた。
「…っ!
秀頼様…!!
こんな所までお越しくださいまして…」
その女性は起き上がり平伏しようとする。
「そのままでいい、起き上がらないで」
「…すみません…」
産後直後のその女性は顔色も悪くぐったりしていた。
そばにいた侍女たちがお子を連れてきた。
「おめでとうございます、お元気な若君でございます」
力強く泣く小さな命に秀頼は心を動かされたようだった。
「ありがとう…。
よく、こんな立派な子を産んでくだされた」
秀頼は小さな我が子を抱く。
そしてその女性を見て優しく微笑んだ。
「貴女も
命を賭けて尽くしてくれたのだな…。
こんな細い身体で
よく頑張ってくださった。
ありがとう…」
「勿体ないお言葉にございます…」
緊張してたその女性は、その時安堵の涙を流した。
千姫は静かにその場を離れる。
複雑だった。
まるで機械のように事務的に夜を共にしていた2人に情が通った瞬間だった。
「ずっと嫌われていると思っておりました」
「どうして…」
「貴方様はいつも遠くを見てらして、私のことなど一目とも見てくださらなかったので」
「……」
「仕方なく私と夜を過ごすのがお辛そうでした…。
申し訳ないと毎回そう思って…。
ですからお子が産まれても、
喜んでくださるか
会いに来てくださるか
不安でございました…」
「…すまない、千紘さん。
貴女の気持ちも考えず
辛い思いをさせてしまった」
そうだ、この女性には千紘という名前があった。
名前も感情もある一人の女性だ。
顔も名前も覚えようとしなかった僕は何て傲慢で酷い男なのだろう。
いや、千紘さんの名前に”千”の文字が入っているから意図的に覚えないようにしたのかもしれない。
どちらにせよ自分のことしか考えていなかった僕は何て未熟なんだろう。
「いえ、秀頼様のお立場を考えれば当然かもしれません。
けれど、これだけは知っておいて欲しいのです。
私はあなた様をお慕い申しております」
「…!」
「私だけではありません。
他の側室たちもみんな秀頼様をお慕いしております。
私たちが大坂にいるのは家の都合だけはないこと、知っておいてくださいませ」
「…僕は…」
「秀頼様は申し訳ないなんて思わないでくださいませ」
「……」
「なんて表情をなさるんですか。
貴方様には家を守る責務がございます。
私はその為にできる事をしたまでです。
嫌われてはいない…それだけで勿体ないことです」
「…ありがとう。
もう今日はゆっくり休んでください
また我が子を見に参ります」
秀頼の第一子は、国松と命名された。