花のようなる愛しいあなた
千姫の新しい生活が本格的に始まった。
ちなみに秀頼と一緒に眠ったのは初夜のみでその後は松や多喜と一緒に寝起きをしている。

朝食後はすぐに接見と執務の時間である。
朝食を共にしたメンバーに、おばば様の長男で大坂城軍事部門責任者の大野修理亮(しゅりのすけ)治長(はるなが)が加わり、客人対応に当たる。
治長は結婚して別の家庭を持っているので、朝食後こちらにやって来るのだ。
大坂城には毎日客人が絶えない。
千姫たちは勉強しながら隣の部屋で控えている。
「九条様お久しぶりでございます」
「ご無沙汰しております。
この度は秀頼様のご結婚おめでとうございます。
すごく素敵な姫が来られたと伺いました」
「ありがとうございます。では、ご紹介しますね。お千!」
幼い千姫はずっと座って動かないでいるのも大変なので基本的にはこうして別室にいるのだが、多くの客人がこのように徳川から来た姫の顔を見たがるのですぐに呼ばれてもいいように近くで待機しているのだ。
そして客人はニコニコしながら千姫を上から下まで嘗め回すように眺め、慇懃に褒めちぎり、お互いが無言になったところで声を潜める。
「…時に淀殿…」
「あ、お千は下がってちょうだい」
「はい」
千姫が隣の部屋に行くと、何やら密談のようなもので盛り上がる。
午前中はずっとこんな感じだった。

また接見の間の近くの政務室では、片桐が文官たちといろいろな訴訟の解決やら税務処理やら雑務を行っている。
客人対応が終わった淀殿たちは、次は政務室に行って訴状に沙汰を下したり様々な問題ごとに対して指示を出したり書類にサインをしたりする。
ややこしい問題があるときは時間をかけて議論をしていく。
大坂城は毎日忙しい。

< 13 / 170 >

この作品をシェア

pagetop