花のようなる愛しいあなた
「何やら楽しそうな催しですな」
「あっ…修理様」
豊国神社のお詣りの時間が迫っているのになかなか秀頼がやって来ないので、治長が秀頼たちを探しにやって来た。
「早くご支度ください」
「あ、すまない修理殿。
つい楽しくて時間を忘れてしまいました。
支度はできてますから参りましょう」

「いつのまに!!!?」
どうやら秀頼と千姫は、重成と糺が熱戦を繰り広げている間にササっと支度したらしい。
「重成と糺は、みんなと対戦してやっててくれ。
よろしくな!」
「え?あ、はい」
「かしこまりました」
秀頼と千姫は涼しい顔をして治長と一緒に豊国社へ向かう。
「じゃぁ、対戦したい人ーーー?」
中庭に集まっていた小姓や女童が嬉しそうに駆け寄って来る。
「はい!」
「はい!」
「はーーーい!!」


治長は少し驚いていた。
いつも大人も顔負けの落ち着きを払う秀頼が
若者らしく笑って遊びに興じる姿を見て胸が痛くなった。
我々は秀頼様を急かし過ぎたのではないだろうか…。

「修理殿、何か?」
「あ、失敬…。
しかしあのような催しをするというのは、城に住む者たちの団結を高める事にもなりましょうし、良いものですなぁ。
特に子供たちとなれば酒席に呼ぶわけにも参りませんし…」
その時、治長は閃いた。
「今年は秀吉公の13回忌ですから、皆を集めて秀頼様の御勇姿を奉納するのはいかがでしょうか?」
「と言うと?」
「先ほどのように若い家臣を集め剣技大会などを開催するのです」
今年は秀頼が成人をしてから初の大きな法要を行う年である。
何かいつもと違う事を行いたいとは考えていた。
「良いかも知れないね」

京都の豊国本社では特別祭礼を執り行う予定だ。
城内の豊国分社では剣技大会が行われることになった。
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