花のようなる愛しいあなた
大坂城に家康からの書状を持ってきたのは織田有楽斎だった。
家康は最初寧々さんに使いを頼もうと思ったのだが、
「数年前と同じことが起こるでしょう」と断られたのだった。
織田有楽斎とは、かつて長益と呼ばれた信長の13歳年下の弟である。
淀殿の母君であるお市の方の弟でもあるので、淀殿にとっては叔父、秀頼や千姫にとっては大叔父に当たる人物である。
織田家が没落した今は、茶人として京都でささやかな生活を送っている。
「叔父上、お久しぶりです」
「おお。お茶々殿、お元気そうで。
秀頼様もご立派におなりあそばして…」
有楽斎は秀頼に向かい慇懃に頭を下げた。
そして家康からの書状を秀頼に渡した。
「!」
秀頼が少し驚いたような顔をすると淀殿は書状を奪うようにして取り急いで読み上げる。
「…こ、これは…!!!」
「秀頼様をまた唆すような書状を送りつけやがって……!!!」
淀殿はわなわなと震えている。
「秀頼様、絶対行っちゃダメよ!」
淀殿は涙目で言った。
淀殿の考えは何年経っても一貫している。
とにかく秀頼を外に出すと命を取られると思っているし、家康の誘いに乗ったら臣下の礼を取らされて徳川に服従を余儀なくされると思っている。
「いつまでもそう逃げ回ってるわけにもいかないよ、母さん」
「!?」
だから秀頼の言葉には声が出ない程驚いた。
「さすがは秀頼様…ご決心がついておられましたか…」
秀頼だってわかってはいる。
今の豊臣家は徳川家には敵わないことを。
しかし、自分から徳川の臣下になると言い出すというのは間違っているように感じた。
「ちょっと出かけて来ます」と城を出て行ってそのまま大きな勢力を持つ天下人になってしまった家臣が
どう自分を説き伏せようというのか興味はあった。
それ相応の納得できるだけの大義名分があるのであれば致し方ないのかも知れない…そうとも感じていた。
今まで豊臣家は徳川家に目をつけられないように穏便に過ごして来た。
それが卑怯だとは思わないし、できれば家康の寿命が尽きるまでこの状態を続けていきたいと思ってきた。
が、そうはさせてもらえないようだ…。
そろそろ白黒つけねばならないのか…。
家康は最初寧々さんに使いを頼もうと思ったのだが、
「数年前と同じことが起こるでしょう」と断られたのだった。
織田有楽斎とは、かつて長益と呼ばれた信長の13歳年下の弟である。
淀殿の母君であるお市の方の弟でもあるので、淀殿にとっては叔父、秀頼や千姫にとっては大叔父に当たる人物である。
織田家が没落した今は、茶人として京都でささやかな生活を送っている。
「叔父上、お久しぶりです」
「おお。お茶々殿、お元気そうで。
秀頼様もご立派におなりあそばして…」
有楽斎は秀頼に向かい慇懃に頭を下げた。
そして家康からの書状を秀頼に渡した。
「!」
秀頼が少し驚いたような顔をすると淀殿は書状を奪うようにして取り急いで読み上げる。
「…こ、これは…!!!」
「秀頼様をまた唆すような書状を送りつけやがって……!!!」
淀殿はわなわなと震えている。
「秀頼様、絶対行っちゃダメよ!」
淀殿は涙目で言った。
淀殿の考えは何年経っても一貫している。
とにかく秀頼を外に出すと命を取られると思っているし、家康の誘いに乗ったら臣下の礼を取らされて徳川に服従を余儀なくされると思っている。
「いつまでもそう逃げ回ってるわけにもいかないよ、母さん」
「!?」
だから秀頼の言葉には声が出ない程驚いた。
「さすがは秀頼様…ご決心がついておられましたか…」
秀頼だってわかってはいる。
今の豊臣家は徳川家には敵わないことを。
しかし、自分から徳川の臣下になると言い出すというのは間違っているように感じた。
「ちょっと出かけて来ます」と城を出て行ってそのまま大きな勢力を持つ天下人になってしまった家臣が
どう自分を説き伏せようというのか興味はあった。
それ相応の納得できるだけの大義名分があるのであれば致し方ないのかも知れない…そうとも感じていた。
今まで豊臣家は徳川家に目をつけられないように穏便に過ごして来た。
それが卑怯だとは思わないし、できれば家康の寿命が尽きるまでこの状態を続けていきたいと思ってきた。
が、そうはさせてもらえないようだ…。
そろそろ白黒つけねばならないのか…。