花のようなる愛しいあなた
伏見付近に着くと船を降り今度は駕籠に乗り換えて陸路を進む。
秀頼は御簾の隙間から村の様子などを一生懸命見た。
片桐京屋敷は伏見城下にある。
「どうでございましょう?
懐かしゅうございますか?」
秀頼は秀吉がまだ生きていたうんと幼い頃伏見に住んでいたらしい。
「全然覚えてないや」
「まぁそうでございましょうね。
最近建て替えたばかりですからあの頃とは…」

「お待ちしておりました!」
予定通り加藤清正や浅野幸長、池田輝政らが秀頼を出迎えた。
それぞれに千騎以上の兵を率いている。
すごい景色だった。
一行は片桐の屋敷で支度を整え隊列を組んで二条城に向かい出発した。

「久しぶりの京都をじっくりご堪能くだされ」
秀頼を載せた駕籠は大通りをすすんでいく。
加藤は秀頼の横について進む。
加藤といえば今や熊本の大大名。
身長190cmという恵まれた体格で勇猛果敢な武将として有名だ。
そんなすごいお方が警護を勤めるとは…!
その反対側には重成がつく。
イケメン過ぎる太刀持ちもまた注目の的だった。

「すごい、さすが京の都だ。
とても洗練されていて街も美しいね」
秀頼は感嘆の声を上げると片桐は誇らしげに言う。
「京都の街が今こんなにキレイになっているのは秀頼様、あなた様のおかげなんですよ」
「えっ…」
「今、ここから見えている寺は全てあなた様が修繕に関わられています。
まぁ、私も尽力しておりますが」
「そうか…」
「秀頼様が幼い頃からずっと寺社仏閣の造営や修繕に尽力してくださった事は京の住人は全員知ってます」
「そうなのか…僕たちがやってきた事は正しかったんだね」
秀頼は嬉しそうに微笑んだ。
「でも、こんな風に修理されてるなんて全然知らなかった。
京に来れて良かった。
片桐殿もありがとう」
感慨深そうに秀頼は言った。
片桐もにこりと笑った。
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