花のようなる愛しいあなた
「お祖父様直々にお出迎え、ありがとうございます」

お前の迎えなど招待したわしと少しの譜代大名しかいないのに…。
随分世間知らずの温室育ちのようだな…。

純粋に再会を懐かしむ秀頼を見て家康は少し心が痛む。
こんな純粋無垢で力のない若者に対し、やりすぎなのではないかという思いがあった。

「さ、どうぞどうぞ。
遠いところわざわざ爺めの誘いに乗ってくださりありがとうございます」
屋敷に入ると家康は秀頼に上座を進めた。
「いえ、お祖父様がお掛けくださいませ。
改めまして、この度はこのようなお誘い賜りましてありがとうございます。
また何年もの間ご無沙汰しました事お詫びいたします」
秀頼は家康の顔を立て、自分は下座に座った。
物腰柔らかで謙虚なその態度に家康は逆に圧倒され平伏すこととなった。


「さぁさ、堅苦しい挨拶はそこまでにしましょ!」
二条城には先に寧々さんも待機していて場の空気を和やかに明るいものにしてくれた。
「皆様もどうぞどうぞ」
家康は片桐や大野や重成などにも席を用意してもてなしてくれた。
しかし加藤だけはそれを固辞した。
「本日私は護衛で参りました故…」
感じ悪いのう…
家康は加藤の態度にムッとしたが堪えて器の大きいところを見せる。
「そうかそうか、好きにしなされ」
加藤は秀頼の横につき眼を光らせた。

会見は緊張感がありつつも和やかに進んだ。
食事は色んな配慮があり、吸い物が出た程度だった。
しかし家康も秀頼も飲んだフリだけした。
腹の中を探り合いながらも政治的な話は極力避け、和やかな話題を探す。

「ときに、お千は元気にやっとりますかな?」
「ええ。とっても元気ですよ」
秀頼は嬉しそうに微笑んだ。
走り回ったり泥まみれになりながら土いじりをしたり乗馬するために馬の世話まで始めてしまった元気な千姫の姿を思うと自然と笑顔になってしまう。
「本当に僕には勿体無いくらいの素晴らしい妻です。
この縁組を叶えてくださったお祖父様には感謝してもしきれないくらいです。
彼女に相応しい夫になれるよう日々精進して参りますので、ぜひご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
秀頼があまりにも嬉しそうに話すものだから、家康も嬉しくなって来る。
そうか、そんなにウチの孫娘が好きか!
「一度千も混じえて皆で集まりたいのう!
両家の絆は永遠じゃ!」

その後、話題は鷹狩や推し鷹、薬づくりについてのうんちくなど主に家康の趣味の話題が続き盛り上がった。
< 153 / 170 >

この作品をシェア

pagetop