花のようなる愛しいあなた
隣の間には人質という形で家康の8男の義直と9男の頼宣が控えている。
とは言っても、2人の少年にとっては天下人である父の用事をただ待つだけの退屈な時間であった。
義直には浅野家のご隠居である長政が付き従い、
頼宣には本当は加藤清正が付き添うはずだったのだが、加藤は秀頼の側から動かないので、本多正純が代わりに付き添っている。
実は浅野家は長政の孫で幸長の娘にあたる春姫と義直の婚約がされたばかりだった。
一方の加藤家も清正の第五子である八十姫と頼宣が婚約中である。
浅野長政・幸長父子や加藤清正は秀頼の護衛としてやって来ているが、義直と頼宣の護衛でもあった。
やることもない義直や頼宣は暇を持て余し次第に足を投げ出したり寝っ転がったりして遊び始めた。
「こら。お行儀良くされなされ」
2人が遊んでるのがバレるとお守り役の浅野や本多が叱責される。
それを知っているため、2人の少年は嬉しそうにギリギリバレない程度に遊び始め守役の2人の反応を見て楽しんでいる。
この2人ももうすぐ10歳か…
随分と躾がなってない様子だが…
こんなものなのか…?
浅野は自身の子や孫を思い浮かべる。
イヤ、こんなものか…。
その次に秀頼の結婚式の時の事を思い出した。
同じ年頃だった秀頼は節度もあり礼儀正しい少年であった。
これが器の差なのであろうか…?
少年たちはこっそりイタズラをするのにも飽きてきて、義直は本多に言ってとあるものを持って来させた。
「それは何だ?」
頼宣が聞くと義直はドヤ顔で説明する。
「南ばんのオランダから取りよせたドロップなる菓子だ」
「うまいのか」
「あぁ。
色によって味がいくつかある。
好きなのをえらべ」
美しい瓶に入った宝石のような菓子は見た目も美しく食欲をそそる。
頼宣が白いのを選ぼうとすると義直はそれを止めた。
「あ、白いのはスースーしてまずいからやめた方が良い」
「不味いというよりは大人の味というやつですな。
ハッカですからスースーしますがスッキリいたしますよ」
本多が説明すると頼宣は赤いやつを手に取った。
「赤いのは甘くて美味いぞ!」
義直が太鼓判を押すと頼宣は口に放り込みしっかりと味わう。
「うむ、美味い!」
「だろ?白いの以外は美味いんだ」
「あ、そうだ。
大人の味とやらはおじさんとおじいさんにあげるよ」
義直は白いドロップを浅野の爺さんに押し付ける。
あんまりこれ、好きじゃないんだけどなぁ…。
浅野は勢いで口に放り込む。
「うむ、気分がスッキリ致しまする…」
「おじさんもあげるよ」
「では、ありがたく…」
本多もドロップを口にする。
みんなでドロップを味わっているところに侍従がやって来る。
「皆様楽しくお過ごしのところ失礼します。
大御所様の会食がお開きになりますのでご準備をお願いします」
とは言っても、2人の少年にとっては天下人である父の用事をただ待つだけの退屈な時間であった。
義直には浅野家のご隠居である長政が付き従い、
頼宣には本当は加藤清正が付き添うはずだったのだが、加藤は秀頼の側から動かないので、本多正純が代わりに付き添っている。
実は浅野家は長政の孫で幸長の娘にあたる春姫と義直の婚約がされたばかりだった。
一方の加藤家も清正の第五子である八十姫と頼宣が婚約中である。
浅野長政・幸長父子や加藤清正は秀頼の護衛としてやって来ているが、義直と頼宣の護衛でもあった。
やることもない義直や頼宣は暇を持て余し次第に足を投げ出したり寝っ転がったりして遊び始めた。
「こら。お行儀良くされなされ」
2人が遊んでるのがバレるとお守り役の浅野や本多が叱責される。
それを知っているため、2人の少年は嬉しそうにギリギリバレない程度に遊び始め守役の2人の反応を見て楽しんでいる。
この2人ももうすぐ10歳か…
随分と躾がなってない様子だが…
こんなものなのか…?
浅野は自身の子や孫を思い浮かべる。
イヤ、こんなものか…。
その次に秀頼の結婚式の時の事を思い出した。
同じ年頃だった秀頼は節度もあり礼儀正しい少年であった。
これが器の差なのであろうか…?
少年たちはこっそりイタズラをするのにも飽きてきて、義直は本多に言ってとあるものを持って来させた。
「それは何だ?」
頼宣が聞くと義直はドヤ顔で説明する。
「南ばんのオランダから取りよせたドロップなる菓子だ」
「うまいのか」
「あぁ。
色によって味がいくつかある。
好きなのをえらべ」
美しい瓶に入った宝石のような菓子は見た目も美しく食欲をそそる。
頼宣が白いのを選ぼうとすると義直はそれを止めた。
「あ、白いのはスースーしてまずいからやめた方が良い」
「不味いというよりは大人の味というやつですな。
ハッカですからスースーしますがスッキリいたしますよ」
本多が説明すると頼宣は赤いやつを手に取った。
「赤いのは甘くて美味いぞ!」
義直が太鼓判を押すと頼宣は口に放り込みしっかりと味わう。
「うむ、美味い!」
「だろ?白いの以外は美味いんだ」
「あ、そうだ。
大人の味とやらはおじさんとおじいさんにあげるよ」
義直は白いドロップを浅野の爺さんに押し付ける。
あんまりこれ、好きじゃないんだけどなぁ…。
浅野は勢いで口に放り込む。
「うむ、気分がスッキリ致しまする…」
「おじさんもあげるよ」
「では、ありがたく…」
本多もドロップを口にする。
みんなでドロップを味わっているところに侍従がやって来る。
「皆様楽しくお過ごしのところ失礼します。
大御所様の会食がお開きになりますのでご準備をお願いします」