花のようなる愛しいあなた
何なんだ…この騒ぎは……!!!

家康は心臓をえぐられたかのような絶望的な気持ちになった。
公家達に出迎えを禁じることで豊臣に打撃を与えようとしたのに、まさかこうして自身に跳ね返って来るとは…!!
家康が初めて上洛した時も、幕府を開いて凱旋上洛した時も、人々はこんなに熱狂しなかった。
長年、智略を尽くしここまで昇り詰めた自分は一体なんなのか。
家康はこの圧倒的なカリスマ性を目の当たりにして、憎悪や焦りが渦巻くのを止める事ができなかった。
カリスマ性、それは戦場において欠かすことのできない才能である。
指揮官のカリスマ性如何で勝敗が決まるなんて事はザラにある。

認めるのは悔しいが
ハッキリ言ってあやつは大物じゃ
母君のことを侮っていたが
教育も行き届き
作法は完璧
年配者に対する態度も立派
部下を思いやる心遣いも見せていた
そして見目麗しいだけでなく、若い
わしにない若さを持っている
大大名の誰かが支持を表明したら
万が一があるやも知れぬ
危険だ
なんとしても不穏の芽は摘み取らねばならない
儂が生きてるうちに…
わしの心配が杞憂であれば良かったものを…

突き刺すような視線を背中に感じ重成は振り返った。
家康はすぐさまにその凍った眼を隠し笑顔を取り繕った。
その後はその仮面を脱ぐことはなかったが、家康の本心を知るにはその一瞬で十分だった。
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