花のようなる愛しいあなた
◆慶長9(1604)年◆
◇正月◇
慶長9(1604)年
正月がやってきた。
「羽根突きやるよー!起きて、起きてーー!」
早朝から完姫は元気だ。由衣を連れて中庭でスタンバイしている。
千姫は松を連れて中庭へ飛び出す。
「もう、早過ぎんだろ!」
眠たそうに重成が文句言いたげにやって来る。
「みんな、今年もよろしくね」
秀頼はやっぱり朝から爽やかだ。
完姫は年長でもあるので、やっぱり上手だ。
「お千ちゃん、筋がいい!
よし、いけっ!!」
みんなを盛り上げるのも上手だ。
おかげで千姫も松も羽根が羽子板にだいぶ当たるようになったし、
飛んでった羽根を取るのに木に登るのも上手になってしまった。
「あああ、なんて事だ…」
重成はお転婆姫たちを見て嘆く。
「何よ、重成!」
完姫が口を尖らせる。
「これから公卿様に嫁ぐ身だってのに、大丈夫なのかよ?」
子どもたちだけの時はみんな割とラフな言葉づかいで過ごしている。
「だから今思う存分楽しんでんじゃない!
あなたにはわからないでしょうけど!」
「向こうに行ったらちゃんとお淑やかにしとかないと嫌われるぞ!」
「わかってるっつーの!」
完姫と重成が言い争いしているのを聞いて千姫は少し不安になる。
「やっぱりおしとやかがいい?
おてんばは、やだ?」
秀頼はさらっと答える。
「僕は元気で笑ってる子が好きだよ、お千ちゃんみたいに」
「えっ、あ…よかった…です」
千姫は嬉しくて真っ赤になってしまう。
秀頼は割と歯の浮いたようなセリフをサラッと言えてしまうのだった。
「……」
その様子を見た完姫や重成が何か言いたげに秀頼を見る。
秀頼は由衣の方をチラッと見た後、目を逸らすように言った。
「もちろん男勝りで頼りになる完姉も好きだし、
甘え上手でちびっ子お松ちゃんも好きだよ。
みんな違って、みんな良いってことだよ」
秀頼のセリフに完姫はやれやれという仕草をする。
「本当、秀頼は当たり障りのないオヤジくさいことばっか言うわよね〜!」
完姫の言葉に重成は反応して言う。
「なんだよ、それ!
秀頼様をバカにすると許さないぞ!」
重成の挑発に完姫が乗る。
「じゃあ勝負しましょうか!」
「望むところだ!」
完子&由衣vs秀頼&重成の羽子板ダブルス戦が始まった。
千姫は審判&点数カウント係だ。
完姫は11歳、由衣は12歳、秀頼と重成は10歳と、4人は年齢が近いせいもあってなかなかの良い勝負だ。
完姫は秀頼と重成のちょうど中間を狙って羽を打つ。
お互いが譲り合ってタイミングを逃し、羽根は地面に落ちた。
「完姉チーム1点!」
「よっしゃー!!」
完姫は由衣とハイタッチした後、松を呼ぶ。
「お松ちゃん!」
「はい♪」
松は嬉しそうに墨を持ってきて重成の頬に×印を書いた。
「何だよ、これ!」
「勝負に罰ゲームは付き物だからよ」
「次は負けねーぞ!」
重成はムキになって高速スマッシュを打ち込んだ。
結衣が板に当てるも羽根は変な方向に飛んでいき、地面に落ちた。
「秀頼くんチーム1点!」
「へへん、どーだ!」
松が由衣の方に墨を持って歩いて行こうとするのを秀頼が制止する。
「女性に墨を塗るわけにはいかない。
お松ちゃん、重成に書いてやって」
「はい♪」
「なんでだよ!!!」
松は重成のもう片方の頬に×印を書いた
どっちが点を取っても重成の顔がどんどん落書きだらけになっていく。
もうどっちが勝つとかそんなことはどうでも良くなっていた。
「こらー、子供たちー!
初詣に行きますよー!」
「はーーーーい!!」
多喜に呼ばれてみんな中庭を後にする。
城の敷地内には豊臣秀吉を祀る豊国神社がある。
みんなで新年の挨拶をした。
今年も忙しい一年が始まる。
正月がやってきた。
「羽根突きやるよー!起きて、起きてーー!」
早朝から完姫は元気だ。由衣を連れて中庭でスタンバイしている。
千姫は松を連れて中庭へ飛び出す。
「もう、早過ぎんだろ!」
眠たそうに重成が文句言いたげにやって来る。
「みんな、今年もよろしくね」
秀頼はやっぱり朝から爽やかだ。
完姫は年長でもあるので、やっぱり上手だ。
「お千ちゃん、筋がいい!
よし、いけっ!!」
みんなを盛り上げるのも上手だ。
おかげで千姫も松も羽根が羽子板にだいぶ当たるようになったし、
飛んでった羽根を取るのに木に登るのも上手になってしまった。
「あああ、なんて事だ…」
重成はお転婆姫たちを見て嘆く。
「何よ、重成!」
完姫が口を尖らせる。
「これから公卿様に嫁ぐ身だってのに、大丈夫なのかよ?」
子どもたちだけの時はみんな割とラフな言葉づかいで過ごしている。
「だから今思う存分楽しんでんじゃない!
あなたにはわからないでしょうけど!」
「向こうに行ったらちゃんとお淑やかにしとかないと嫌われるぞ!」
「わかってるっつーの!」
完姫と重成が言い争いしているのを聞いて千姫は少し不安になる。
「やっぱりおしとやかがいい?
おてんばは、やだ?」
秀頼はさらっと答える。
「僕は元気で笑ってる子が好きだよ、お千ちゃんみたいに」
「えっ、あ…よかった…です」
千姫は嬉しくて真っ赤になってしまう。
秀頼は割と歯の浮いたようなセリフをサラッと言えてしまうのだった。
「……」
その様子を見た完姫や重成が何か言いたげに秀頼を見る。
秀頼は由衣の方をチラッと見た後、目を逸らすように言った。
「もちろん男勝りで頼りになる完姉も好きだし、
甘え上手でちびっ子お松ちゃんも好きだよ。
みんな違って、みんな良いってことだよ」
秀頼のセリフに完姫はやれやれという仕草をする。
「本当、秀頼は当たり障りのないオヤジくさいことばっか言うわよね〜!」
完姫の言葉に重成は反応して言う。
「なんだよ、それ!
秀頼様をバカにすると許さないぞ!」
重成の挑発に完姫が乗る。
「じゃあ勝負しましょうか!」
「望むところだ!」
完子&由衣vs秀頼&重成の羽子板ダブルス戦が始まった。
千姫は審判&点数カウント係だ。
完姫は11歳、由衣は12歳、秀頼と重成は10歳と、4人は年齢が近いせいもあってなかなかの良い勝負だ。
完姫は秀頼と重成のちょうど中間を狙って羽を打つ。
お互いが譲り合ってタイミングを逃し、羽根は地面に落ちた。
「完姉チーム1点!」
「よっしゃー!!」
完姫は由衣とハイタッチした後、松を呼ぶ。
「お松ちゃん!」
「はい♪」
松は嬉しそうに墨を持ってきて重成の頬に×印を書いた。
「何だよ、これ!」
「勝負に罰ゲームは付き物だからよ」
「次は負けねーぞ!」
重成はムキになって高速スマッシュを打ち込んだ。
結衣が板に当てるも羽根は変な方向に飛んでいき、地面に落ちた。
「秀頼くんチーム1点!」
「へへん、どーだ!」
松が由衣の方に墨を持って歩いて行こうとするのを秀頼が制止する。
「女性に墨を塗るわけにはいかない。
お松ちゃん、重成に書いてやって」
「はい♪」
「なんでだよ!!!」
松は重成のもう片方の頬に×印を書いた
どっちが点を取っても重成の顔がどんどん落書きだらけになっていく。
もうどっちが勝つとかそんなことはどうでも良くなっていた。
「こらー、子供たちー!
初詣に行きますよー!」
「はーーーーい!!」
多喜に呼ばれてみんな中庭を後にする。
城の敷地内には豊臣秀吉を祀る豊国神社がある。
みんなで新年の挨拶をした。
今年も忙しい一年が始まる。