花のようなる愛しいあなた
そんな中、会見の約10日後の4月7日。
浅野家の御隠居である長政が死亡した。
64歳だった。
長政はあの会見が終わって疲れが出たのか、その日の夜から寝込んでしまった。
熱と汗が止まらずそのまま帰らぬ人となった。

「父は会見が無事終わりほっとしたのだろう。
急なことではあるが、私が父の意志を引継ぎ両家の架け橋となり奔走を続ける所存だ」
息子の幸長は淡々と加藤に話した。
「幸長殿も疲れているようにみえるが大丈夫か?」
「まぁちょっと疲れが出てるのは出てるけどなぁ。
どうってことない」
「そうか、気を落とさないでくれよな」
「はは、何を言ってるんだ。
父もあれだけ長生きしたのだ。
家のことは俺が何とかやっていくし
会見で徳川家と豊臣家の関係も何とかうまくいきそうだし
思い残すことはそうなかっただろう。
まぁ…病気ではなく戦場で華々しく最期を飾らせてやりたいと思う気持ちも嘘ではないがな」
「…そうだな、あの頃は良かったな……」

加藤清正は会見後、秀頼を大坂まで送り届け留守居役の福島正則を載せて再び京に戻って来ていた。
あれから熱っぽく身体がだるい日が続いている。
そんなところに浅野長政の訃報である。
毒でも盛られたのではないだろうか…?
ついそんな懸念が頭をよぎる。

幸長殿は何ともなさそうだし、俺の思い違いかもな…。
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