花のようなる愛しいあなた
徳川家のバタバタをよそに、豊臣家は内政に力を入れていた。

例の会見以降、秀頼は自領をしっかり守り領民と共に結束を固めることが重要だと再確認した。
城内部の整備に加えて、外堀に続く運河の整備や製作などを実施した。
その工事に併せ自費で道頓堀を作ってしまう領民も現れ、大坂の街はますます発展していった。

重成は大野修理治長に付き添って堺へ視察に出かけることが増えていた。
領内だし、秀頼も一緒に出掛けもっと外の世界を知りたいとそう思ったが、
しかしこの間のような大掛かりなことをいちいちやるのはさすがに骨が折れる。
「警備体制のこともあるけど、大騒ぎされるのも困るよね。
もっと気楽に外出できないものだろうか?」
「お忍びって言ったって、秀頼様のこの身長だろ?」
「確かにね」
「加えてこの美貌!
目立たない訳がないと思う」
「……」
秀頼は重成に領内のことを見て回らせ、報告を待つことにした。

対外的には、急ピッチで大仏の建設を進めている。
「早く大仏をお作りし、世の安寧をお願いしなくてはいけないね。
皆、頑張ってほしいと伝えてくれ」
「かしこまりました」
京都の大仏は鋳造も終わり眩いほどに金が施された。
その周りに足場が組まれ大仏殿を建設中だ。
春にはできあがりそうである。
大仏殿が出来上がったら次に梵鐘を作る。
鐘の鋳造と並行して鐘楼も作らねばならない。
梵鐘には鐘銘を刻むのでその文言は誰に依頼するか、開眼供養は誰に依頼するか、その選定についてなど議論は尽きることがない。
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