花のようなる愛しいあなた
「ひでよりくん、ごめんなさい…
おじいちゃんはわるものなの?」
千姫はしゅんとして言った。
「千はやくたたず…?」
秀頼がそばに来て申し訳なさそうに言う。
「いや、そんなことないよお千ちゃん、僕がまだ子供なのが悪いんだ・・・。
徳川家の皆さんはよくしてくれてると思うよ。
まだまだ荒れてる関東の方をしっかりまとめながら、上方と連携を取って政を行うってとっても大変だと思うんだ。
大坂は遠いし、挨拶に来るのが遅くなっても仕方ないと思うんだ」
「…」
「僕が大人になったら政治の中心地はここになるから、うん」
「…」
「そうしたら皆大坂の屋敷に引っ越してくるから…そうしたら、うん」
「そうしたら?」
「今度は江戸にみんななかなか挨拶に行けなくて、今度は徳川家がむくれる番かもしれないね」
秀頼がおどけて話して見せるものだから、千姫も悲しい気持ちが和らいだ。
「そっかぁ!」
「僕はお千ちゃんが大坂に来てくれて嬉しいよ。
城の雰囲気も明るくなったし、毎日が楽しくなった気がする」
「千も大さかに来てよかった!」
「良かった。でも、お千ちゃん…」
秀頼は千姫の目を見て言った。
「辛いときは泣いていいからね」
「えっ」
「僕が傍にいるから無理したり強がらないで」
「強がってないもん!」
「なら、よし!」
秀頼は千姫の頭をぽんぽんして去って行った。

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