花のようなる愛しいあなた
その豊臣家の当主の秀頼は11歳になった。
「ではこちらにお名前と花押(サイン)をお願いします」
「はい」
豊臣家は沢山の寺社復興を手掛けていて、秀頼は責任者という立場なので書類にサインすることが増えていた。
寺社奉行は片桐である。
今年は特に建設ラッシュで、教王護国寺南大門・吉野山の安祥寺蔵王堂や大橋・金峯山蔵王堂、子守社・西宮神社・広田神社・神峯山寺・本山寺・法安寺・勝尾寺・常光寺・法隆寺などの改修が終わる予定で片桐はとても忙しい。
なので、政務の内容についてはそこまで理解してほしくないが、隣に秀頼がいるとお伺いする手間が省けてとても助かるのであった。
秀頼は様々な書類にサインするほか、境内などに飾る豊国大明神の神号を書幅に記したり、その文字の練習をしている。
・豊国大明神
・内大臣豊臣朝臣秀頼
時には力強く、時には繊細な文字で筆を走らせる。
そして練習しながら片桐や文官の様子を観察している。
敢えて何も口には出さない。
何なら何もわかっていないふりをしている。
油断した片桐や他の文館たちからもっと本音を聞き出したいからだ。
その内、片桐は堂々と「江戸に許可を取らねば」などと言い始めるようになった。
重成は秀頼の付き人なので、部屋の隅で警備をしながら控えている。
ただひたすら影のように静かにして過ごしている。
だが、秀頼と二人になった時にはつい本音が漏れる。
「てか、片桐、あいつ要らなくね?
要は全部徳川に指示仰いでるだけの指示待ち人間だろ?
しかも全部情報流してる時点で普通にダメだろ」
「片桐殿は徳川殿の部下だったから、いつまでも引きずってるんだろう。
どうすべきかもう少し観察してみようじゃないか」
「ではこちらにお名前と花押(サイン)をお願いします」
「はい」
豊臣家は沢山の寺社復興を手掛けていて、秀頼は責任者という立場なので書類にサインすることが増えていた。
寺社奉行は片桐である。
今年は特に建設ラッシュで、教王護国寺南大門・吉野山の安祥寺蔵王堂や大橋・金峯山蔵王堂、子守社・西宮神社・広田神社・神峯山寺・本山寺・法安寺・勝尾寺・常光寺・法隆寺などの改修が終わる予定で片桐はとても忙しい。
なので、政務の内容についてはそこまで理解してほしくないが、隣に秀頼がいるとお伺いする手間が省けてとても助かるのであった。
秀頼は様々な書類にサインするほか、境内などに飾る豊国大明神の神号を書幅に記したり、その文字の練習をしている。
・豊国大明神
・内大臣豊臣朝臣秀頼
時には力強く、時には繊細な文字で筆を走らせる。
そして練習しながら片桐や文官の様子を観察している。
敢えて何も口には出さない。
何なら何もわかっていないふりをしている。
油断した片桐や他の文館たちからもっと本音を聞き出したいからだ。
その内、片桐は堂々と「江戸に許可を取らねば」などと言い始めるようになった。
重成は秀頼の付き人なので、部屋の隅で警備をしながら控えている。
ただひたすら影のように静かにして過ごしている。
だが、秀頼と二人になった時にはつい本音が漏れる。
「てか、片桐、あいつ要らなくね?
要は全部徳川に指示仰いでるだけの指示待ち人間だろ?
しかも全部情報流してる時点で普通にダメだろ」
「片桐殿は徳川殿の部下だったから、いつまでも引きずってるんだろう。
どうすべきかもう少し観察してみようじゃないか」