花のようなる愛しいあなた
冬の間は作物を育てない。
手持ち無沙汰になった千姫たちは早起きの習慣もついたことだし、秘密の通路の散策を再開させた。
今まで本丸に近い場所しか探検したことがなかったので、二の丸付近や三の丸はあちこち珍しい。
新しい通路はこれといって見つけられなかったが、みんなで散策してるだけでもとても楽しい時間だ。

寧々さんからは宿題を貰った。
秀頼と重成は、今までの政務報告書を可能な限り全て読んで理解することが言いつけられた。
千姫と松はその内容を教えてもらい粗方理解すること、そして…。

「あなたたち、似てるわよね?」
寧々さんは千姫と松を見比べながら言った。
「だって従姉妹ですもん」
「じゃあさ、2人はたまに入れ替わって忍法変わり身の術を確立させといてね」
「忍法!!?
何てワクワクする響き!」
寧々さんは悪戯を企む子供のような表情で言った。
「授業の時に2人の衣装を取り替えてバレたら負け、バレなかったらクリアね!」
「わかりました!」
千姫と松はいろいろ相談して、あまり面識のない先生の授業の時に衣装を交換して授業に臨んだりすることにした。
知ってる人に見つかったらそれは怒られるに決まってるので、念入りに計画を立てた。


年末。
今年も豊臣家が行う寺社復興事業は沢山の功績を残した。
中山寺の再建、金剛寺水分大明神社の修復、相国寺の法堂や鐘楼を造営、醍醐寺西大門の造営、多田院の再建、箕面寺の再建、五社総社の本殿を再建、浄土宗大本山である金戒光明寺の阿弥陀堂再建と昨年に引き続き今年も建設ラッシュだった。
特に相国寺の法堂の天井の竜は見事な出来栄えで、手をたたくと反響音が起こり龍の鳴き声が聞こえると評判である。
秀頼は静かに世の安寧と民の幸せを思い、今年も静かに祈りを捧げた。
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