花のようなる愛しいあなた
それは元亀元年(1570年)のことだった。
北近江を治める浅井長政は妻のお市の方の兄、織田信長と対立。
もとは織田方の裏切りだった。
織田は、浅井と長年同盟関係にある越前の朝倉氏を攻撃したのだ。
浅井は織田に着くか朝倉に着くか決断を迫られたが、長年友好関係を保ってきた朝倉を味方することにした。
実家と嫁ぎ先が敵対関係になった場合、嫁は離縁され実家に戻されるのが戦国の常であったが、お市の方はそれを拒んだ。
愛する夫と運命を共にする事を選んだのだ。
長期化した戦の末、天正1(1573)年、信長は長政を居城であった小谷城に追い詰めた。
攻撃のリーダーは羽柴秀吉だった。
後の豊臣秀吉である。
城を囲み、火を放ち、徹底的に攻撃した。
長政は「もはやこれまで」と自害をして果てた。
しかしこんな遺言を残した。
「お市、そなたは生きよ。
生きて子供たちを守ってくれ。
浅井の血を守ってくれ」
そして茶々にもこう遺言を残した。
「妹たちをよろしく頼む。
『我々は織田家の者ぞ、手出しは無用じゃ』
こう叫びなさい」
長政には子供が6人いた。
上から順に先妻の息子万福丸、茶々、側室の子多喜、初、多喜の同腹の弟である万寿丸、江となる。
「織田の血を引いている」ためお市の方とその娘の茶々・初・江は救出されることはわかっていたが、そうでない子はどうなるかわからない。
男は誰であろうと皆殺しにされていた。
女でも歯向かう者や勝手に逃げようとする者には容赦がなかった。
長男の万福丸はすぐに見つかり命を奪われた。
「どうかお助けください…!」
多喜の母は一歳の万寿丸を庇うように抱きかかえ必死に懇願したが、二人揃って槍の餌食となった。
多喜が危ない!!
目の前で兄弟たちを惨殺された茶々は咄嗟に多喜に抱きつき必死に叫ぶ。
「われわれはおだけのものぞ、てだしはむようじゃ!!」
「われわれはおだけのものぞ、てだしはむようじゃ…!!!」
どれだけの時間が経ったのかわからない。
気がつくと四姉妹とお市の方は羽柴秀吉に救い出され、織田家に護送された。
茶々、つまり後の淀殿が4歳の時だった。
「その時、私は浅井家の娘ではなく、織田家の侍女として生きることになったの。
身寄りが無くなった側室の子を家族同様に優しくしてくれたお市さまには感謝してるし、茶々姉は命の恩人なの。
感謝してもしきれないわ」
多喜は松に言った。
「…そうだったのね…。
ふしぎだったの。
母さまは何で姉妹なのに侍女なんだろうって」
「あなたが産まれたのも茶々姉や浅井家のみんなのおかげ。
この感謝の気持ちは絶対忘れちゃダメよ」
「はい!!!」
松はお初さんや千姫の方を向き
「今後ともよろしくおねがいします」
と深々と頭を下げた。
北近江を治める浅井長政は妻のお市の方の兄、織田信長と対立。
もとは織田方の裏切りだった。
織田は、浅井と長年同盟関係にある越前の朝倉氏を攻撃したのだ。
浅井は織田に着くか朝倉に着くか決断を迫られたが、長年友好関係を保ってきた朝倉を味方することにした。
実家と嫁ぎ先が敵対関係になった場合、嫁は離縁され実家に戻されるのが戦国の常であったが、お市の方はそれを拒んだ。
愛する夫と運命を共にする事を選んだのだ。
長期化した戦の末、天正1(1573)年、信長は長政を居城であった小谷城に追い詰めた。
攻撃のリーダーは羽柴秀吉だった。
後の豊臣秀吉である。
城を囲み、火を放ち、徹底的に攻撃した。
長政は「もはやこれまで」と自害をして果てた。
しかしこんな遺言を残した。
「お市、そなたは生きよ。
生きて子供たちを守ってくれ。
浅井の血を守ってくれ」
そして茶々にもこう遺言を残した。
「妹たちをよろしく頼む。
『我々は織田家の者ぞ、手出しは無用じゃ』
こう叫びなさい」
長政には子供が6人いた。
上から順に先妻の息子万福丸、茶々、側室の子多喜、初、多喜の同腹の弟である万寿丸、江となる。
「織田の血を引いている」ためお市の方とその娘の茶々・初・江は救出されることはわかっていたが、そうでない子はどうなるかわからない。
男は誰であろうと皆殺しにされていた。
女でも歯向かう者や勝手に逃げようとする者には容赦がなかった。
長男の万福丸はすぐに見つかり命を奪われた。
「どうかお助けください…!」
多喜の母は一歳の万寿丸を庇うように抱きかかえ必死に懇願したが、二人揃って槍の餌食となった。
多喜が危ない!!
目の前で兄弟たちを惨殺された茶々は咄嗟に多喜に抱きつき必死に叫ぶ。
「われわれはおだけのものぞ、てだしはむようじゃ!!」
「われわれはおだけのものぞ、てだしはむようじゃ…!!!」
どれだけの時間が経ったのかわからない。
気がつくと四姉妹とお市の方は羽柴秀吉に救い出され、織田家に護送された。
茶々、つまり後の淀殿が4歳の時だった。
「その時、私は浅井家の娘ではなく、織田家の侍女として生きることになったの。
身寄りが無くなった側室の子を家族同様に優しくしてくれたお市さまには感謝してるし、茶々姉は命の恩人なの。
感謝してもしきれないわ」
多喜は松に言った。
「…そうだったのね…。
ふしぎだったの。
母さまは何で姉妹なのに侍女なんだろうって」
「あなたが産まれたのも茶々姉や浅井家のみんなのおかげ。
この感謝の気持ちは絶対忘れちゃダメよ」
「はい!!!」
松はお初さんや千姫の方を向き
「今後ともよろしくおねがいします」
と深々と頭を下げた。