花のようなる愛しいあなた
「あ、そういえば…
おい、抜作!
お前ウチから送った年貢突き返してきてるだろ!
何年も何年も!!
どういう了見だ!!」
抜作…!?
福島は片桐且元に向かって抗議した。
福島や加藤や片桐は昔馴染で付き合いが長い。
片桐の幼名は助作という。
昔から要領が悪かった助作は抜作と呼ばれいじられキャラだった。
「関ケ原の戦いの後、市松殿の領土は豊臣家から独立したものになりましたでしょう?」
「でも治めてる土地は何ら変わんねぇんだから、別に年貢送ったって良いだろうがよ!」
「当家としてはありがたいのですが…徳川家からはよく思われないのですよ…。
幕府の決定事項に違反してるとか謀反を企んでるとか疑われたら困るではないですか。
豊臣家や味方してくれる皆が不利になるようなことは家老として避けていきたいのですよ」
「じゃあ越前の秀康んとこはどうなんだよ!
あそこからは年貢受け取ったって聞いたぞ!」
「あれは秀康様のご厚意です」
「ウチと同じじゃねえか!」
「秀康様は『ウチは豊臣家を援助する』と徳川家に断言されて、了承を得ております。
その上で当家も徳川家にお伺いを立てて了承を得ているのです。
市松殿にそれができますか?」
「………」
秀康は徳川家康の次男だから許される話であって、普通の大名が宣言したところですぐに制裁を受けるだけであろう。
家康はそういう人間である。
「とうてい無理ですよね?
だから市松殿から送ってもらった年貢のことは報告もしておりません。
なかったものとさせてもらっております」
「…そうだったのか…」
「…私も市松殿や虎之助殿と同じく徳川家と豊臣家の懸け橋であると自負しております」
「抜作なりにいろいろ考えてんだな、悪かったよ」
「その呼び名もやめて頂きたい…!」
「でも実際領土があれだけ減ったら財政も厳しいだろう?
できればウチからも何か送らせてもらいたいんだが」
福島の意見を聞いて加藤は閃いた。
「そうだ、年貢米を一度堺の商人に託し、そこから超安い値段で買い取ってもらうってのは、どうだ?」
「良い考えかも知れませんな!」
こうして豊臣家は今や大大名となった安芸広島藩主の福島正則と肥後熊本藩主の加藤清正から経済協力をしてもらえることとなった。
二人が帰った後、秀頼は政務室で片桐に言った。
「東市正殿、私はあなたを誤解していたようです」
「へ?」
「申し訳ありませんでした」
「そ、そんな、頭をお上げくださいませっっっ…」
「東市正殿が徳川家にすべて報告されていたのは、当家に火種が降りかかるのを防ぐためだったのですね」
「お分かりいただけて光栄です。
あ、…でも淀の方様はご納得いただけないと思いましたので、内密にしておりまして…
いや、決して軽んじてる訳ではないのですっっ」
「わかります、そのおかげで当家はここまでやって来れました。
…しかしいつまでもこのままと言う訳には…」
「そうでございますよねぇ、ちょっと徳川様に相談してみますねぇ」
片桐が笑顔で言ったので、秀頼はやはり不安になった。
おい、抜作!
お前ウチから送った年貢突き返してきてるだろ!
何年も何年も!!
どういう了見だ!!」
抜作…!?
福島は片桐且元に向かって抗議した。
福島や加藤や片桐は昔馴染で付き合いが長い。
片桐の幼名は助作という。
昔から要領が悪かった助作は抜作と呼ばれいじられキャラだった。
「関ケ原の戦いの後、市松殿の領土は豊臣家から独立したものになりましたでしょう?」
「でも治めてる土地は何ら変わんねぇんだから、別に年貢送ったって良いだろうがよ!」
「当家としてはありがたいのですが…徳川家からはよく思われないのですよ…。
幕府の決定事項に違反してるとか謀反を企んでるとか疑われたら困るではないですか。
豊臣家や味方してくれる皆が不利になるようなことは家老として避けていきたいのですよ」
「じゃあ越前の秀康んとこはどうなんだよ!
あそこからは年貢受け取ったって聞いたぞ!」
「あれは秀康様のご厚意です」
「ウチと同じじゃねえか!」
「秀康様は『ウチは豊臣家を援助する』と徳川家に断言されて、了承を得ております。
その上で当家も徳川家にお伺いを立てて了承を得ているのです。
市松殿にそれができますか?」
「………」
秀康は徳川家康の次男だから許される話であって、普通の大名が宣言したところですぐに制裁を受けるだけであろう。
家康はそういう人間である。
「とうてい無理ですよね?
だから市松殿から送ってもらった年貢のことは報告もしておりません。
なかったものとさせてもらっております」
「…そうだったのか…」
「…私も市松殿や虎之助殿と同じく徳川家と豊臣家の懸け橋であると自負しております」
「抜作なりにいろいろ考えてんだな、悪かったよ」
「その呼び名もやめて頂きたい…!」
「でも実際領土があれだけ減ったら財政も厳しいだろう?
できればウチからも何か送らせてもらいたいんだが」
福島の意見を聞いて加藤は閃いた。
「そうだ、年貢米を一度堺の商人に託し、そこから超安い値段で買い取ってもらうってのは、どうだ?」
「良い考えかも知れませんな!」
こうして豊臣家は今や大大名となった安芸広島藩主の福島正則と肥後熊本藩主の加藤清正から経済協力をしてもらえることとなった。
二人が帰った後、秀頼は政務室で片桐に言った。
「東市正殿、私はあなたを誤解していたようです」
「へ?」
「申し訳ありませんでした」
「そ、そんな、頭をお上げくださいませっっっ…」
「東市正殿が徳川家にすべて報告されていたのは、当家に火種が降りかかるのを防ぐためだったのですね」
「お分かりいただけて光栄です。
あ、…でも淀の方様はご納得いただけないと思いましたので、内密にしておりまして…
いや、決して軽んじてる訳ではないのですっっ」
「わかります、そのおかげで当家はここまでやって来れました。
…しかしいつまでもこのままと言う訳には…」
「そうでございますよねぇ、ちょっと徳川様に相談してみますねぇ」
片桐が笑顔で言ったので、秀頼はやはり不安になった。