花のようなる愛しいあなた
6月。
予定通り朝鮮国の使節団が京にやってきた。
徳川幕府は秀忠を日本国王であるとして二条城で使節団をもてなし、国交を結ぶに至った。
あの戦争のおかげで朝鮮は国が傾きめちゃくちゃ大変な思いをした。
朝鮮国は謝罪を求めたが、徳川幕府は謝罪を拒否した。
「あれは豊臣政権が起こした戦争であって我々が謝る筋合いはありません。
ですが、その元凶である豊臣は滅亡しました。
ご安心ください。
我々徳川はあなた方と友好的な関係を望んでいます」
徳川幕府は朝鮮国にそう説明をした。

「なーにが"日本国王"だよ!」
後陽成天皇は苛立ちをみせた。
鷹司信房が口を開こうとするのを制して続ける。
「分かってるよ、俺は朝鮮国と会いたいとは思っていないし、政治、特に外交に関しては全て幕府に一任してる…というか、させられてる立場だ。
”国王”ってのも、そう言っといた方が話がまとまるもんなぁ。
どうせ俺なんか飾りだもんな。
飾りは飾りらしく大人しくしとけってことだろ?
あぁ、やってらんねぇなぁ。
もう、天皇なんか辞めちゃおうかな」
「主上それは…」
「政仁親王はまだ11歳です」
「どうせ飾りじゃねぇか。
だったら従順な子供の方が皆にとって都合が良いのではないか!?
譲位だ、譲位!」
「そんなことをすれば朝廷は更に徳川の傀儡になるだけです!
政仁親王がご自分の考えをしっかりともてるご年齢になられるまで、何卒ご辛抱を」

徳川幕府は豊臣家はもちろんのこと天皇家も置き去りにしてどんどん勢力を強めていった。
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