花のようなる愛しいあなた
「姫様は、去年一年でどのくらいの面積の田んぼからどれくらいの米が収穫できたかは体験しましたか?」
「はい」
「とっても少ないでしょう?」
「正直、こんなに大変なのにこれしか獲れないのかって」
「そうなんですよね。
大変なんです、食べていくのって」
「…」
「考えてみて欲しいんですけどね、
今の大坂城には何人の人が暮らしていているか分かりますか?」
千姫は首をふる。
「だいたいね、1万人くらいです。
かつては3万人くらい暮らしていましたが…。
それで、今ある田畑でその内何人分の食糧が賄えると思いますか?
どのくらい買い入れなくちゃならないでしょうか?
城の備蓄はどのくらいありますか?
籠城した際には何年持ちますか?
一年でいくら予算がないと足りないでしょうか?」
千姫は今まで考えたこともないことを言われて言葉が出なかった。
「家臣が算出して上手くやることかもですけど、間違いが起こったら?
嘘の報告を受けたら?
その報告の真偽を判断するにはある程度の知識が必要です。
きっと寧々さまはそれを姫さまにお伝えしたかったのでしょう。
そしてその知識は絶対秀頼さまのお役に立てると思いますよ」
「…そんなの言ってくれないとわからない…」
千姫は自分の思慮の浅さに落ち込んだ。
「寧々さまもおいおいお話ししようとされてたんだと思うわ。
千姫様は今、おいくつですか?」
「10歳です」
「まだまだこれからだもの。
落ち込まないで。ね?」
「お辰さん、ありがとうございます。
私、もっと頑張ります!」
そこに小間使いの少女がやって来て言った。
「辰姫様、寧々さまがお呼びです」
「あ、はい」
「辰姫様…?」
「”姫”なんて呼ばれるのは恐れ多いことです。
改めまして、石田三成の娘のお辰と申します」
「はい」
「とっても少ないでしょう?」
「正直、こんなに大変なのにこれしか獲れないのかって」
「そうなんですよね。
大変なんです、食べていくのって」
「…」
「考えてみて欲しいんですけどね、
今の大坂城には何人の人が暮らしていているか分かりますか?」
千姫は首をふる。
「だいたいね、1万人くらいです。
かつては3万人くらい暮らしていましたが…。
それで、今ある田畑でその内何人分の食糧が賄えると思いますか?
どのくらい買い入れなくちゃならないでしょうか?
城の備蓄はどのくらいありますか?
籠城した際には何年持ちますか?
一年でいくら予算がないと足りないでしょうか?」
千姫は今まで考えたこともないことを言われて言葉が出なかった。
「家臣が算出して上手くやることかもですけど、間違いが起こったら?
嘘の報告を受けたら?
その報告の真偽を判断するにはある程度の知識が必要です。
きっと寧々さまはそれを姫さまにお伝えしたかったのでしょう。
そしてその知識は絶対秀頼さまのお役に立てると思いますよ」
「…そんなの言ってくれないとわからない…」
千姫は自分の思慮の浅さに落ち込んだ。
「寧々さまもおいおいお話ししようとされてたんだと思うわ。
千姫様は今、おいくつですか?」
「10歳です」
「まだまだこれからだもの。
落ち込まないで。ね?」
「お辰さん、ありがとうございます。
私、もっと頑張ります!」
そこに小間使いの少女がやって来て言った。
「辰姫様、寧々さまがお呼びです」
「あ、はい」
「辰姫様…?」
「”姫”なんて呼ばれるのは恐れ多いことです。
改めまして、石田三成の娘のお辰と申します」