花のようなる愛しいあなた
お雪は寡黙だったが真面目で仕事などもすぐに覚えたようだ。
「姫様、御用があるときは京や江戸までも走りますので何なりとおっしゃってください」
初日にそのようなことを言ったほかは、ごく普通の侍女として大坂城に馴染んでいった。

秀頼は辰姫から受け取った文書に目を通したり会議を開いたりでますます忙しい日々を送ることになった。
秀頼の頑張っている姿を垣間見て千姫も改めて勉学に励んで秀頼の支えになる存在になることを決意した。

そんな中、訃報が届く。
武家伝奏として朝廷と大坂の間を何度も行き来して支えてくれた勧修寺光豊が亡くなった。
38歳だった。
恐らくストレスが原因だと推測される。
豊臣家にとっては大きな痛手だった。

同じく豊臣家を支え徳川と豊臣の架け橋となってくれていた越前の松平秀康も少し前に亡くなった。
33歳だった。
死因は梅毒だったと言われている…。

江戸の江からは、秀忠との7番目の子で和姫が産まれたとの手紙が届いた。
「母さまって本当安産体質よね。すごいわ」
「きっと姫様も大人になりましたら沢山のお子に恵まれますわ」
「だと良いんだけど」
最近の秀頼との距離を考えるとちょっと不安になってしまう千姫だった。



この年、豊臣家は與杼(よど)神社の拝殿、住吉神社の南門、そして北野天満宮を作り上げた。
この北野天満宮の本殿は現在では国宝に指定されていて、八棟造といって神社建築の主流である権現造の原型となった。
結局今年は朝廷との関係も微妙になってしまったためなのか、もう修繕する箇所がないのかわからないが、修繕の要請がなかった。
「今後の復興事業はどうしていきましょうか?」
秀頼は片桐と政務室で過ごすことが多くなっている。
「そうだなぁ…。東市正殿はどう思いますか?」
「ん~…そうですねぇ…。
ここ数年ですごいスピードで工事を手がけましたからねぇ。
所領内で困ってる個所などがないかどうか家臣たちや門跡たちにも聞いてみましょう」
「では、よろしく頼みますね」
「はい」
こうして秀頼にとって消化不良の一年が終わろうとしていた。
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