花のようなる愛しいあなた
今年の年賀の挨拶は本当にささやかなものだった。
今まで以上に大名たちの拝謁は減った上に、天皇からの勅使や摂家からの使者なども来なくなった。
九条家からはお祝いの品や手紙などは送られて来たが、何とも寂しい年明けとなった。
「今までの礼も忘れて何てこと…!!」
淀殿は怒り狂ったが、秀頼は冷静だった。
「これが今の僕の本当の実力だよ。
今まで父さんの遺言や母さんの外交努力に支えられていたおかげだったんだ」
「そんなことないわ、秀頼さま、あなただって努力し続けている事、母はよく知っているわ」
淀殿は秀頼を抱きしめる。
「全て徳川が悪いのです。
本当にあいつらのせいで何でこんな惨めな思いを…」
秀頼は千姫の方をチラッと見た。
「…やめましょう、母さん」
秀頼は抱きついてる母をそっと離し目を伏せた。
「………」
千姫が悪い訳ではない。
しかし徳川の娘としては罪悪感でいっぱいになる。
過去何度か秀頼は
「徳川は徳川、千姫は千姫」
と笑って一蹴してくれた。
しかし…
「来訪客ももう来ないようですし、政務始めを行います。
では、失礼します」
無表情にそう言って謁見の間を後にした。
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