花のようなる愛しいあなた
国の安寧を見護る大仏。
これが松永久秀によって焼かれてしまったのが永禄10(1567)年のことだ。
約40年前のこととなる。
その後秀吉は天下を統一したのを機に大仏を再建することにした。
古都・奈良ではなく、現在の都・京都に。
それは戦国の世が終わり、新しい世が始まるという象徴でもあった。

大仏は、文禄4(1595)年に出来上がったが、翌年に起きた慶長伏見地震で倒壊してしまった。
「国を守るべき大仏が自身の姿さえ守れないとは!
この役立たずが…!」
秀吉は怒り狂い、大仏を粉々に破壊してしまった。

そんなことして、祟りがあるぞ…!!!
人々は恐れた。

その後まもなく秀吉は亡くなり、後を引き継いで秀頼が…というよりは淀殿と片桐が大仏を復活させようとした。
大仏は壊れてなくなってしまったが、建物の大仏殿は残っていた。
外で大仏を作ると運び込む事ができないので、建物の中で大仏を作ることになった。
先代の大仏は木造造りで耐震性に弱いものだった。
なので、今度は銅製で大仏を鋳造することになった。
しかし、建物の中で火を使う鋳造物を作ればそれはもう、すぐ火事になる。
せっかく復活した大仏は灰になってしまった。
今度は大仏殿も一緒に燃えてしまった。
千姫が輿入れするちょっと前の慶長7年の1月のことだ。

何ということだ…!!!
せっかく作ったのに…!!!
お金もかかったのに!!!!!

当時関わった者たちのショックは大きく、かなりのトラウマになった。

地震の次は火事…
この大仏事業は呪われてるのではないのだろうか…!?
片桐たちがやる気を失い、その後は触れないようにしていたのは否めない。

「まぁ、火災でケチがついてしまったのは確かじゃが、あれはきっと災いを仏が代わりに受け止めて下さった証じゃ。
その後感謝もせず放置しっぱなしは良くないとわしは思うのじゃ。
あれは亡き秀吉公の悲願でもあった。
主上からの依頼も落ち着いた今だからこそ、国の心の礎となるようなしっかりとした大仏を完成させるべきじゃ」
「流石は大御所様!
その通りでございますな!
早速秀頼様に申し伝えましょう!」
片桐の表情が輝いた。
「では、徳川家からも助っ人を出そうぞ。
宮大工の中井正清を使うがいい」
「何と心強い!
ありがとうございます!」
「後のことは、そうじゃなぁ…
京都所司代の板倉に任せるから二人で相談し合って進めるがよいじゃろう」
「はっ!それでは早速取り掛かります」

大仏復興事業はこれで豊臣と徳川の二家による公共事業となる。
国家の安寧を祈る為の公共事業を両家で行う。
片桐の胸は高鳴った。
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