身代わり王女の禁断の恋
「しかし、それしかないのです。
王女殿下がこのような状態だと知れ渡れば、
王弟派は必ず廃太子を願い出るに決まって
ます。
それでは、王女殿下の意識が戻られた時、
私は王女殿下に顔向けできません。
どうかご協力お願い致します。」

クラウス様が私に向かって頭を下げる。

「でも、きっと見る人が見れば、
分かります!
その王弟殿下だって、気づくに
決まってます。」

私はクラウス様そう訴えるけれど…

「大丈夫です。
王弟殿下は、この城ではなく、東の離宮に
お住まいですので、城内から出なければ、
会う事はございません。
晩餐会や舞踏会は、私が完璧にお守り
致します。」

と必死の形相で説得される。

「それでも、私にも生活があります。
病気の母もおりますし、ピアノや
バイオリンの生徒もいます。
いなくなるわけにはいかないんです。」

私がそう言うと、クラウス様はしたり顔で頷いた。

「存じ上げております。
全ては手配済みです。」

え?
手配済みって?

「お母上は、王立高度医療研究所付属病院に
入院していただきます。
今頃、入院手続きも終わっているはずです。
そこなら、きっとお母上のご病気も良く
なるに違いありません。
それから、クリスティアーネ嬢の生徒さん
たちには、王立音楽アカデミーから講師を
向かわせます。」

あまりに見事で返す言葉もない。

それでも、頭をフル回転して、反論を探す。

「でも、急に先生が変われば、生徒さんたちも
不信に思います。」

「大丈夫だと申し上げたはずです。
ミュラー男爵は昨年亡くなられました。
現在、跡取りとなる男子もいらっしゃら
ない。
そうですね?」

「………はい。」

「そのため、領地替えになったと申し上げ
ます。
クリスティアーネ様が、この役割を完璧に
遂行していただけたら、本当にもっと
広い領地と子爵の位をお約束致します。
これは、国王陛下もご了承済みのことで
ございます。」
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