身代わり王女の禁断の恋
思い出した。

そう、あの時、クラウスがそう言うから…

「………だから、私は毒を飲んだのよ。
私は、そのような結婚を望まないから。」

私がそう言った途端、クラウスもヨハネスも看護師も一斉にその場に固まった。

「………いま、なんと…?」

「私は、望んでもいない結婚はしないわ。
お父さまにもそう申し上げる。
それが受け入れられないなら、今度は、
城の塔のてっぺんから飛び降りるわ。」

クラウスは、息をのんだ。

「っ!
王女殿下!」

クラウスは私を呼んだ後、はたと気づいたように振り返った。

「………ヨハネス!
その者を連れて、自室で控えていろ。
今聞いたことは、絶対に他言無用。
いいな。」

ヨハネスと看護師はクラウスの指示に黙って従った。

部屋には、私とクラウスのみ。

「王女殿下、お願いでございます。
王女殿下のお命は王女殿下おひとりのもの
ではございません。
どうか、冷静にお考えくださいませ。」

どうして…

どうして、クラウスは分かってくれないの?
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