身代わり王女の禁断の恋
アルフの手を取った私は、そのまま中央まで連れていかれ、踊り始める。

踊りながら王女殿下とすれ違うと、王女殿下は楽しそうにウィンクして寄越した。

時折、切れ切れに人々の声が聞こえてくる。

「王女殿下に… 」

「誰だ? あの娘… 」

「そっくり… 」

バイオリンを弾いているだけなら、誰も目に止めなかったのに、アルフと踊るだけで、こんなにも人目を引くものなの?

「くくっ
みんな、クリスを見てる。」

踊りながら、アルフが囁いた。

「アルフのせいよ。
演奏してる時は、みんな見向きもしなかった
のに。」

「これで、俺たちが婚約しても、こうして
俺が舞踏会で宮廷楽師に一目惚れしたって
思ってくれるだろ?」

っ!!

「そんなことを考えて誘ったの?」

私はあまりの狡猾さに呆れて物も言えない。

「だって、困るだろ?
引きこもりの俺と君がどこで出会って恋に
落ちたのかって聞かれたら。」

「………そうだけど… 」

「明日、君の母上のお見舞いに行こう。」

「え?」

「うちの母にも紹介するよ。」

「え… あの… 大后(おおきさき)陛下に?」

私は俄かに緊張する。


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