身代わり王女の禁断の恋
「まぁ、さようでございましたか。
さ、ご一緒にどうぞ。」

ダニエラに促されて、私たちは部屋へ入った。

母は、ベッドではなく、その向かいのカウチに座っていたけれど、私の顔を見るなり、膝掛けを置いて立ち上がった。

「クリス! よく来てくれたわ。
ありがとう。」

私より背の低い母が、背伸びをして私を抱きしめてくれる。

私も母をぎゅっと抱きしめた。

「お母さま、ずっと会いに来れなくて
ごめんなさい。」

「いいのよ。
王女殿下にお仕えする者が、そう頻繁に外出
できるとは思ってないわ。」

それにしても…

「お母さま、なんだか、とっても元気そう。
以前より、顔色もいいし、何より、会話
してても、全然息切れもしないわね。」

私がそう言うと、

「そうなの。
こちらでの治療の効果があったみたいでね、
毎日、散歩できるくらいまで
良くなったのよ。」

母は嬉しそうに語った。

それから、ふと隣のアルフに目を移して、

「クリス、こちらは?」

と尋ねる。

「こちらは… 」

と私が紹介しようとすると、

「アルフレート・ハーラルト・フォン・
シュルツです。」

とアルフが自己紹介を始めた。

母はその自己紹介を聞いて、何かが引っかかるのか、首を傾げる。

「どこかで… ?」

きっと名前に聞き覚えがあるのね。
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