身代わり王女の禁断の恋
私は、説明を補足する。

「お母さま、王弟殿下よ。」

それを聞いて驚いた母は、珍しく取り乱した。

「まぁ!
このような所へわざわざお運びいただき、
申し訳ございません。」

母は、慌ててドレスを摘んで膝を折って挨拶をする。

対するアルフは落ち着いたもので、

「いえ、そのようにお気遣いなく。」

と母の手を取る。

「どうぞ、お掛けになってください。」

アルフはそう言うけれど、母は、

「いえ、そういうわけには… 」

と恐縮しきり。

諦めたアルフは、本題を切り出した。

「実は、今日はお願いがあって参りました。
クリスティアーネ嬢と結婚したいのです。
お許しいただけますか?」

まるで話が飲み込めないかのように、ポカンと固まる母と ダニエラ。

「お母さま、
私、アルフと結婚してもいい?」

私が再度問い掛けると、母はようやくハッとしたように私を見つめ返した。

「結…婚…って、クリス、王弟殿下と?」

「そう。」

「そうって…
クリス、王弟殿下よ?
あなたが気安く話し掛けられるお方じゃ
ないのよ?」

いつも落ち着いた母がうろたえる姿を見たのは、初めてかもしれない。

アルフは、落ち着いた声で母に語りかける。

「あの、私は王弟である前に、ひとりの男と
して、クリスティアーネ嬢に惹かれ、彼女と
生涯を共にしたいと思いました。
地位とか身分とかを考えず、どうかこの
結婚をお許し願えませんか?」
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