身代わり王女の禁断の恋
「い、いえ、あの、うちとしては、クリスに
婿を取ってもらってと思ってたもので…
あの、でも、まさか王弟殿下に見初められる
などとは思いもよらず… 」

しどろもどろになる母に、私は思わず吹き出してしまった。

「お母さま、大丈夫だから。
落ち着いて。」

私は母の手を取り、

「いいから、一度座ろう?」

と先程のカウチに腰掛けさせた。

私とアルフは、その向かいのソファに腰を下ろす。

アルフは話を続ける。

「ミュラー家を心配されるお気持ちは
分かります。
私としては、将来、クリスが男の子を何人か
産んでくれたら、そのうちの一人に
ミュラー家を継がせたいと考えてます。
爵位も私の息子でしたら、子爵ではなく
公爵になると思います。
ただ、こればかりは男子が生まれない
ことにはどうしようもありませんから、
お約束はできませんが…
いかがでしょう?
クリスティアーネ嬢との結婚をお許し
いただけませんか?」

アルフの話を聞いて、母はただ頷くばかりだった。

けれど、ダニエラの出してくれたお茶を飲んで落ち着いた後、私に質問をした。

「クリスは、王弟殿下との結婚を
望んでるのよね?」

それを聞いて私は、

「はい。」

と即答した。

それでも、母の心配は尽きないようで…

「でも、うちと王室では家格が違い
すぎるわ。
クリス、絶対に嫌なことも言われるで
しょうし、苦労もするわよ。
それでも、あなたは王弟殿下のもとへ
行くの?」

母の心配はもっともだと思う。

「それでも、私はアルフといたいの。
お母さま、お願い。」

すると、アルフが私の手を握って言った。

「クリスは、何があっても私が守ります。
生涯をかけて、必ず幸せにします。
どうか、結婚させてください。」

アルフに頭を下げられて、母はまた焦り出す。

「いえ、その、反対してるわけでは
ございません。
どうか、頭をお上げになって…
クリスが、覚悟の上で王弟殿下と…と
言うなら、私に異存はございません。
王弟殿下、至らない娘ではありますが、
どうかよろしくお願い致します。」

母は、王弟殿下に向かって深く頭を下げた。
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