身代わり王女の禁断の恋
廊下でホッと肩の力を抜いたアルフに私は声を掛ける。

「アルフ、今日は私の部屋に寄って行って。」

「ありがとう。
じゃあ、久しぶりにクリスのバイオリンを
聴かせてもらおうかな。」

そう言ったアルフは、もういつもの穏やかで優しいアルフだった。

私の部屋に入ると、私はバイオリンを調弦して優しく穏やかな曲を選んで奏でる。

アルフはそれを楽しそうに聴いていた。

何曲か奏でた後、私はバイオリンを置いて、アルフの隣に座った。

「ねぇ、アルフ、どうして国王陛下は
アルフにあんなに冷たいの?
お母さまは違うとはいえ、血を分けた兄弟
でしょ?」

私が尋ねると、アルフは分かりやすく困った顔をした。

「じゃあ、想像してみて。
クリスの母上がある日突然、再婚するって
言って、クリスと同じ21歳の青年を連れて
来たらどう思う?」

「それは… 」

なんとなく嫌かもしれない。

頭では分かっていても、そんな若い子に走るお母さまを見たくはない。

「同じなんだよ。
王宮で下働きをしていた俺の母が前国王に
見初められたのは18の時。
兄上と同い年なんだ。
嫌だったと思うよ。
そこへ俺が生まれて、やっぱり、俺も嫌悪の
対象になった。
仕方ないことだと思う。
その上、俺が8歳で前国王がなくなり、
兄上が即位した時、フルーナはまだ3歳。
俺たちの知らないところで、かなり揉めた
みたいなんだ。
王太子を俺にするか、フルーナにするか。
大公はフルーナを押し、公爵は俺を押して、
一触即発の状態だったらしい。
それが嫌で、母は俺を連れて東の離宮に
篭り、俺を王太子にすることを拒否した。
そのいろんな出来事の一つ一つが、
引っかかってるんだと思う。
決して兄上が悪いわけじゃないんだ。」

そう語るアルフは、仕方ないと言いながらも、とても寂しそうだった。
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