身代わり王女の禁断の恋
愛の女神ジュノーの祝福を
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愛の女神ジュノーの祝福を

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コスモスが終わった後、冬を迎えて寂しかった宮廷の庭にも、ようやく大輪の薔薇が咲く季節が巡ってきた。

私は、今、シンプルなドレスに身を包んで、宮廷内の礼拝堂へと向かっている。

アルフは、これでもかって言うほどの豪華なドレスを用意してくれようとしたんだけれど、私は、敢えてスカートの膨らみが少ない、けれど品のある淡いシャンパンカラーのレースを使ったドレスを用意してもらった。

自らを飾り立てるのではなく、真心ひとつを持って、アルフのもとへ嫁ぎたかったから。


私をエスコートするはずの父はもういない。

代わりに今日、隣に立ってくれているのは…

「ありがとう、クラウス。」

「……いえ、私があなたにしたことを思えば、
このくらいのことは… 」

荘厳なパイプオルガンの音色に迎えられて、私たちは礼拝堂の中へ一歩踏み出す。

クラウスの腕に掴まり、一歩、また一歩。


最前列左側に見えるのは、お母さま。

すっかり顔色もよく、4月に退院となり、元の家をアルフが改修してくれて、戻ることになった。

本当に良かった。

父が男爵として治めていた領地は、アルフの直轄地となった。

また、ミュラー子爵に与えられるはずだった土地も今はアルフの直轄地となっている。

いつか、私が子供を何人も産んだら、アルフの直轄地を分け与えてくれるらしい。


アルフ、ありがとう。
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