身代わり王女の禁断の恋
そんな話をしていると、ノックの音が聞こえた。

「国王、王妃両陛下がお出ましで
ございます。」

クラウスが扉を開けると、私も先日の舞踏会で初めて拝見した国王陛下とその半歩後ろに王妃陛下が立っていらっしゃった。

両陛下は、そこにいらっしゃるだけで、大きな威圧感と存在感を感じて、へりくだらざるを得ない気持ちになる。


王妃陛下は、私をご覧になるなり、

「これは…
本当に、フルーナではないの?」

と仰せられた。

私は、慌てて膝を折り、頭を下げる。

「初めて拝謁を賜ります。
亡き男爵リヒャルト・フォン・ミュラーの娘
クリスティアーネ・ディートリンデ・
フォン・ミュラーでございます。」

私は出来うる限り丁寧に挨拶をする。

「そなたがフルーナの代わりを務めてくれる
のだな。
不自由を強いることになるが、よろしく
頼む。」

国王陛下にそのようなお言葉をいただいて、私は心からご期待に添いたいと思った。

「はい。
ご期待に添えますよう、精一杯、務めたいと
存じます。」

私の返事を聞いた国王は、満足そうに頷き、クラウスに向かって言った。

「それで、フルーナの容態は?」

クラウスは、厳しい表情で答える。

「依然、昏睡状態のままでございますが、
医師によれば、危険な状態は脱したそうで
ございます。」

「そうか。
では、見舞っていく。」

「はっ!」

クラウスは、王女殿下の寝室の扉を開き、両陛下をお通しする。


私は、両陛下といえども、やはり人の親なんだと改めて思った。


両陛下は、王女殿下の顔を見て、しばしの時間をその部屋でお過ごしになり、帰っていかれた。



それから、毎日、朝食前と就寝前には、両陛下が王女殿下を見舞いに訪れた。

その度に、私は緊張し、なかなか心休まる時間がなかった。
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