身代わり王女の禁断の恋
それから私は、クラウスとユリアの監視下での生活が始まった。

午前中はクラウス相手にダンスの練習をして過ごす。

「王女殿下、ダンスのご経験は?」

「困らない程度には… 」

「では、バイオリン講師だけではなく、
ダンス講師ができる程度にしてさしあげ
ましょう。」

そう言ったクラウスは、その堅物な表情からは想像もつかないほどダンスの名手で、リードもとても上手だった。


王女殿下にはクラウスが25歳、王女殿下が10歳の時からお仕えしているそうで、王女殿下にダンスの手ほどきをしたのもクラウスなのだそう。

クラウスは現在38歳、王女殿下は23歳。

王女殿下には、最近、近隣諸国の王子からいくつかの縁談が来ているそうなので、その縁談がまとまる前に、なんとしても目覚めていただきたい…というのが、クラウスの願いらしい。


それから1週間程度は、自室のみで生活をしていた私だったけれど、大広間のピアノを弾いてみたくなった。

ユリアに王女殿下のレッスン教本を見せてもらったけれど、残念ながら、9歳のエミーリエよりもさらに簡単な曲ばかり。

それでも、せっかくのピアノ。
簡単な曲でも弾いてみたい。

私はユリアを伴ってピアノの前に座った。

さすが王宮のピアノ。

調律は正確だし、音もよく響く。

初めはゆっくりと教本通りに演奏していた私も、徐々に楽しくなり、つい、装飾音符を増やして変奏を始めてしまった。

すると、ユリアの手が私の肩に置かれた。

見ると、ユリアが首を横に振っている。

はぁ………

私は、演奏をやめて、ピアノの蓋を閉じた。
< 17 / 155 >

この作品をシェア

pagetop