身代わり王女の禁断の恋
私はそのまま進んでいき、小屋をノックしてみる。

三度ノックしてみたけれど、応答はない。

そういえば、ユリアが言ってた。

この森には、滅多に人が入らないって。

木こりが入るのも、年に数回だって。


私は、そっとその扉を押してみる。

ギィと軋んだ音がして、その扉は開いた。

窓を締め切られたその部屋の中は、ほとんど日が差さず、板壁の隙間から差す光が薄い板の線のように光を形作っている。

中には、ほとんど物がなく、白くなった灰がそのまま残された暖炉と小さな食卓がひとつ、椅子が2脚のみ。

聞こえる物音はなく、ただ小鳥のさえずりが心地よい音楽を奏でている。

私はそのまま中へ足を踏み入れることなく、扉を閉めた。


ここでバイオリンを弾いたら、気持ちいいだろうなぁ。


私は森の中で小さくひらけた空を見上げて思う。


そうだ!
明日、バイオリンを持ってこよう!

ここでなら、小鳥しか聞いていないし、弾いてもきっと問題はないよね?


その日、私はうきうきしながら部屋に戻った。
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