身代わり王女の禁断の恋
「それって、私が来賓の方々と踊るって
こと?」

「はい。」

「無理っ! 無理です。
そんな知らない方と踊るなんて… 」

しかも、相手はきっとどこかの国の国王陛下や王太子殿下でしょ?

いや王太子殿下じゃなかったとしても、王子殿下でしょ?

百歩譲って、大公さまや公爵さまだったとしても…

絶っ対に無理!

「これだけ踊れれば心配はいりません。
直近の舞踏会は、来月の予定です。
詳しい日程や出席予定者は後ほどご連絡
申し上げます。」

そんなぁ…

ダンスなんて上達しなければよかった…



私は、午後になるのを待って、バイオリンとともに森へ向かった。

いつものように、調弦してバイオリンを弾く。


しばらくすると、約束通り、ハールが現れた。

「フルーナ、今日も会えて嬉しいよ。」

ハールの温かな笑顔を見ると、沈んでいた気分も不思議と高揚してくる。

「ハール、ごきげんよう。」

私がバイオリンを置いて挨拶すると、ハールは笑顔で言った。

「今日は、一緒に食べようと思って、栗の
タルトを持ってきたんだ。」

ハールは、手に持ったバスケットを掲げて見せる。
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