身代わり王女の禁断の恋
どうしよう。

クラウスやユリアのいない所では、絶対に物を食べてはいけないって言われてるのに…

私の表情が曇ったのを見てとったのか、ハールが心配そうに尋ねる。

「フルーナ。もしかして、栗は嫌いだった?」

「いえ、そうじゃないわ。」

どうしよう。

どうすればいいの?

「フルーナ、俺は、君の笑顔が見たくて
持ってきたんだ。
嫌なら無理に食べなくていいんだよ。」

ハールの心遣いに胸が苦しくなる。

「ハール、違うの。
実は、私ね、侍従から何も食べちゃいけない
って言われてるの。」

「ん、それは、どうして?」

ハールが首を傾げる。

「あのね、気を悪くしないで欲しいんだけど、
その、もし、ね、万が一、毒が入ってると
いけないからって… クラウスが… 」

私がそう言うと、ハールは顔を曇らせた。

「クラウスは、俺を疑ってるんだ?」

「違うの! ハールを疑ってる訳じゃなくて…
王位継承には、少なからずそういう揉め事は
付き物だから…って。」

ハールは、落とした視線を上げて、私を見つめた。

「俺は、絶対にフルーナを傷つけたり
しない。それは信じてほしい。」

ハールの真剣な眼差しに、私は胸の奥底を掴まれた気がした。

「もちろん、信じてるわ。」

私がそう言うと、ハールは嬉しそうに笑った。
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