身代わり王女の禁断の恋
お母さま…


もう1通は、医師からの診断書だった。

母の発作の頻度は格段に下がり、日常生活に差し障りがない程度に近づいているとのこと。

もう少し療養を続けて、できれば発作の頻度を年一回程度、それも軽いものにしていくというようなことが書かれていた。



よかった…

お母さまがお元気になられたのなら、私がここにいる意味もあったということよね。



「では、王女殿下、そろそろ晩餐会へお越し
願います。」

っっ!

クラウス…

そのためにお母さまの手紙を持ってきたのね。


私は重い足取りで晩餐会の会場へと足を踏み入れる。

晩餐会は初めてじゃない。

いつも主賓を挟んで左に国王陛下、右に王妃陛下、私の席はいつも国王陛下のすぐ左か、主賓の次の位に当たる来賓の方を挟んでその左に座る。

だから、とても緊張する。

絶対おいしいお料理が出されているはずなのに、いつも全然食べた気がしない。

今日は来賓がとても多い。

だから、私の右も左も見知らぬ人。

私の左は我がシュテファン王国の西にあるトピアス王国の第二王子、右は北にあるヴィーラント王国の第三王子。

事前にクラウスが説明をしてくれたが、初めて会う男性と一体、何を話せばいいのか。

私には、外交はもちろん、政治も経済もさっぱり分からない。
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