身代わり王女の禁断の恋

「ちょっと失礼。」

ハールは、私を取り巻く男性たちをかき分け、私の目の前に立った。

「フルーナ、ごきげんよう。」

ああ… いつものハールだ…

「ごきげんよう。」

「フルーナ王女殿下、私と踊って
いただけますか？」

「はい。」

ハールに誘われて、私は一も二もなく返事をする。

ちゃんとした音楽に合わせて踊るのは初めて。

ハールのリードに合わせて、軽やかにステップを踏む。

ふふっ
楽しい。

あっという間に、一曲終わってしまった。

「フルーナ、もう一曲、お相手願えますか？」

ハールの申し出に

「喜んで。」

と答えた私は、続けてハールと踊る。

3曲続けてハールと踊った私の所へ、クラウスがやってきた。

「王女殿下、こちらへ。」

「何？」

「ここではちょっと…
こちらへお願いします。」

有無を言わせぬクラウスの様子に、私は只ならぬものを感じ、素直に従う。

「ハール、ちょっと行ってくるわね。」

ハールに声を掛けて、立ち去ろうとすると、ハールに手を掴まれた。

私が振り返ると、そこには真剣な表情をしたハールがいる。

「フルーナ！ 俺を信じろ。」

ん？
何？ 突然。

私が首を傾げると、

「フルーナ、俺を信じるんだ。」

そう言われた。

どういうこと？

聞きたいことはたくさんあったけれど、クラウスが急かすので、私は後で聞こうと思いつつ、その場を後にした。