身代わり王女の禁断の恋
彼女に出会って、初めての雨の日、俺はこれほど雨を恨めしく思った事はなかった。

雨だから彼女は来ない。

分かってはいても、せめて彼女との特別な場所に身を置きたくて、俺は雨の中、あの森へ行った。

木こりの作業小屋で雨宿りしていると、突然、扉が開いた。

入り口に立っているのは、フルーナだった。

フルーナは、涙に濡れた顔でこちらを見ていた。

「ハール!」

俺の名を呼んだフルーナは、俺に抱きついて泣いた。

ああ……

俺はもうフルーナへの想いを抑えきれなかった。

フルーナの華奢な体を抱きしめて、永遠にこの腕の中に閉じ込めておきたいと思った。

それから、暖と明かりを取るために、暖炉に火をつけて、2人で過ごした。

その日、フルーナじゃないフルーナに、俺は初めてキスをした。
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