身代わり王女の禁断の恋
「っっ!!
ハール!!」

クリスが驚いた声を出しかけて、口を押さえてこちらに駆けてくる。

「どうしたの!?」

クリスは声を潜めて尋ねる。

「迎えに来た。
一緒に行こう。」

俺が言うと、クリスはさらに驚いた顔をする。

けれど…

「行けないわ。」

クリスが言う。

おそらく、クラウスに何か弱みを握られているんだろう。

「大丈夫。
君が何を心配してるのかは知らないけど、
何があっても俺が君を守るから。
だから、俺と一緒に行こう。」

俺がそう言うと、クリスは真っ直ぐに俺を見上げた。

「分かったわ。
ちょっと待ってて。」

クリスはそう言って、奥の部屋に入り、バイオリンを持ってきた。

「行こう!」

俺はクリスの手を取り、城内を不自然でない程度に足早に歩いていく。

東の離宮に連れて行った所で、クラウスがすぐに連れ戻しに来るのは目に見えてる。

俺は城を出ると、そのまま用意しておいた馬車で、市街へと向かった。
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