身代わり王女の禁断の恋
「どこへ向かってるの?」

クリスに尋ねられ、

「ベルンハルト」

と都から離れた海岸沿いの辺境の地を挙げた。

「ベルンハルト?」

「ああ。
俺の直轄地に行けば、すぐに見つかって
しまうだろうけど、全く関係ない所なら、
大丈夫だと思う。
ベルンハルトは、観光地だから宿もたくさん
あるし、知らない人間が滞在していても
誰も不振に思わない。」

説明した後で、俺は尋ねる。

「クリスは、クラウスにどんな弱みを
握られてるんだ?」

クリスの顔が曇る。

「弱みというか…
母が… 」

クリスは、ベルンハルトへ向かう道中、自らの身の上について語った。

母が病気で王立病院に入院してること。

父は昨年亡くなったコンツェルトマイスターのリヒャルト・フォン・ミュラー男爵であること。

本名は クリスティアーネ・ディートリンデ・フォン・ミュラーということ。

そして、ウィッグを取って、見事なプラチナブロンドを見せてくれた。

「やっと本当の君に会えた。」

俺は馬車の中でクリスを抱きしめる。

もう絶対に離さない。
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