身代わり王女の禁断の恋
「では、お母さま、行ってまいります。」

私は、母に挨拶をして、クラウス様の待つ広間へと戻った。

「クラウス様、お待たせいたしました。」

私はクラウス様に続いて馬車寄せに向かう。

御者が馬車の扉を開けて踏み台を置いてくれると、クラウス様が私の手を取って馬車に乗せてくださる。

クラウス様は、私の向かい側に乗り込み、馬車は静かに動き始めた。



王宮に着くと、クラウス様に続いて城に入る。

先日の大広間とは違い、随分と奥へ上へと進んでいく。

「クリスティアーネ嬢、どうぞ。」

随分と豪奢な扉の前でそう言われ、クラウス様によって開かれた扉の中へと足を踏み入れた。

煌びやかな装飾の部屋の奥にもう一つ扉がある。

クラウス様はまっすぐそこへ向かい、その扉も開いた。

奥には天蓋付きのベッドがあり、周りには医師や看護師と思しき人たちが取り巻いている。

「どうぞ。」

クラウス様に促されて、ベッド傍に歩み寄ると、そこには私と同い年くらいの女性が横たわっていた。

驚くべきはその容貌。

髪の色こそダークブラウンだけれど、顔立ちは私と瓜二つだった。

「クラウス様、この方は………?」

「フロレンティーナ・アレクシア・フォン・
シュルツ王女殿下であらせられます。」

王女殿下…

この方が…

「実は、この事は他言無用に願いたいの
ですが… 」

とクラウス様は前置いて話し始める。

「王女殿下は、現在、服毒により昏睡状態に
陥っていらっしゃいます。」

「え? なぜ?」

驚いた私は思わず、素直な疑問が口をついて出てしまった。

「気づいたらこの部屋で倒れて
いらっしゃったので、詳しいことは分かり
兼ねますが、おそらくは、何者かに毒を
盛られたのではないかと推察致して
おります。」

「そんな… 」

国王陛下の娘として何不自由ない生活をなさって、この国の誰よりも幸せなのだと思ってたのに…
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