身代わり王女の禁断の恋
裁判所の入り口には、衛士が立っている。

「何者だ?」

そう問われて、咄嗟に私は、

「王女フロレンティーナです。
入ってもいいかしら?」

と王女のふりをして答えた。

衛士は、即座に姿勢を正して、

「はい! 失礼いたしました!」

と通してくれた上、案内の人まで手配してくれた。

私は案内人の後ろについて薄暗い廊下を抜け、法廷の後ろの扉から入って傍聴席についた。

「王弟殿下は、王位簒奪を目論み、王女殿下を
誘拐し、遠方のベルンハルトに幽閉した
ものであります。」

罪状を読み上げられる間、アルフは何も言わず、黙って聞いていた。

有る事無い事でっち上げられた罪状を静かに聞いたアルフは、意見を求められて初めて口を開いた。

「一つ目。
王位簒奪なんて考えてもいないし、
そもそも、王位になんて興味もない。
二つ目。
王女殿下を誘拐などしていない。
俺は、今は亡きミュラー男爵の娘と旅行に
出掛けただけだ。
三つ目。
幽閉もしていなければ、監禁もしていない。
デタラメなことを言うのは
いい加減にしろ。」
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