身代わり王女の禁断の恋
けれど、法廷の誰もアルフの言うことを聞くつもりはないらしい。

あの時の中佐が証言台に立った。

役人が中佐に質問する。

「あなたは、ベルンハルトの地で王女殿下に
拝謁しましたか。」

「はい。
あれは確かに王女殿下でした。」

「王女殿下のご様子はいかがでしたか?」

「怯えて震えておいででした。
王弟殿下に拘束され、立ち尽くして
おいででした。」

淡々と噓を吐く中佐。

それを聞いて、裁判官は誤った判決を下そうとしているのは明白だった。

「嘘よ!!
アルフはそんなことしていない。」

私は傍聴席から叫んだ。

「アルフは私と旅行に行っただけ。
私は王女でもないし、監禁もされてない。」

傍聴席の左前方から、クラウスが睨んでいるのが目に入った。

クラウスは、そばの役人に何か耳打ちをする。

けれど、今さら引くわけにはいかない。

私が、さらに口を開こうとすると、役人がやってきて、私を連れ出そうとした。


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