身代わり王女の禁断の恋
それから、何度も目覚めて、何度も眠りに落ちた。

目覚める度にクラウスの心配そうな眼差しがそこにあった。

夢か現か分からないけど、時々、お父さまとお母さまが私を呼ぶ声が聞こえた気もする。


何度も目覚めるうちに、少しずつ頭がすっきりしてきた。

クラウスと何を話したか定かではないけれど、いくつか会話もした気がする。

そんな私が、もう何度目か分からない目覚めの時、視線を彷徨わせると、少し乱れた黒髪が掛け布団に寄り掛かって眠っているのが見えた。

ふふっ
珍しい。

……… ああ、さっき、私が手を握ってるように言ったから。

ほんとに真面目で律儀な人。

そんなの、眠ったらやめてしまっていいのに。

そんなクラウスだから、私は…


「クラウス… 」

私は、そっとクラウスの名を呼ぶ。

「王女殿下…
っ! 失礼を致しました!」

目覚めたクラウスは、慌てた様子で頭を上げた。

「ふふっ
構わないわ。
おもしろいものが見られたもの。」

「ご気分はいかがでございますか?」

クラウスが心配そうに私を覗き込む。

「悪くないわ。
でも、そうね、水を飲みたいわ。」

私がそう言うと、クラウスは立ち上がって、

「すぐにヨハネスを呼んで参ります。」

と部屋を出て行った。
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