嫌いな僕と、好きな私

「俺はそんな、あんたが嫌いだ。」

そう告げた時、彼女はどんな顔をしていたのか。
今ではもう思い出せないが、季節だけは覚えている。
じめじめした気温、汗ばんだ額に前髪がへばりつき不快感を覚える。
それは梅雨が明ける前のーーーーー……。




ピピピピ、ピピピピ。と耳元でけたたましく携帯のアラームが起床の時間を知らせる。
久しぶりに高校時代の夢を見たもんだ。
今は夢とは真反対の季節だと言うのに。
ふぅ、とため息を吐き脳に酸素を深く運ぶ。
のったりとした動きで布団から出て仕事に行く準備をする。
特別、何をするわけでもない、嫌になるくらい同じデスクワーク作業を繰り返すだけ。
辞められるものなら辞めて別の仕事をしたいが生きていく為には妥協も必要だ。
思わず出そうになるため息を吐き出させない様にネクタイをキュッと締めた。



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