嫌いな僕と、好きな私

キュッと蛇口を閉めると、先程出ていた水の代わりにため息が出てきた。
私はしまった、と思い右手で口元を隠しチラリと後ろで朝ごはんを食べている旦那を盗み見る。
様子を見る感じでは聞かれてはいないようで一安心し、何事も無かったように笑顔を作る。

「今夜も遅くなりそうですか?」
「うん。」
「何か食べたいものはありますか?」
「ない。」
「そうですか。何かあったら言ってくださいね。ほの方がいいでしょう。」

うん。と一言だけ言うと身支度をする為、リビングから出て行く。
机の上には綺麗に食べられた皿が残っていた。
私はそれを見て、また出そうになるため息を出さない様に首を振り片付けを始めた。

片付けが終わる頃になると洗濯機が回り終わった音が聞こえる。
そのまま洗濯機のもとへ行き、干す為に籠の中に入れていくと玄関から音が聞こえる。
旦那が会社に行くのだと思い、見送ろうと小走りで旦那のもとへと向かう。
が、背中が見えたので小走りをやめてゆっくりと歩きながら「いってらっしゃい。気をつけてね。」そう一声をかけたが見向きもせず旦那は家を出て行った。

職場に行く為。ねぇ、本当に職場?もやもやは消えないまま自分の感情と反対に綺麗になった服を干していく。
目に涙を浮かべながら。



【今度一緒に遊びに行きましょうね。】
【そうですね。是非。】



その文書が頭の中をぐるぐる回り私の思考をかき乱す。
ねぇ、その人は誰?何故その女性と遊びに行くの?必要?
私は落ち着かせる為に、胸の上で握りこぶしを作り、何度も大丈夫と呟き涙を出させない様に堪えた。
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