テキトー上司は、溺れるほどの愛を私に注ぐ。
いつか、また会いたい。
その時には……あの日のお礼と、日々募っていくこの気持ちを伝えたい。
「ま、いいけど。もう会えないかもしれないんでしょ?時間、無駄にして泣かないでよね」
「ご忠告ありがとうございます」
沙耶香の言葉に嫌味ったらしく笑えば「もう!」と沙耶香が頬を膨らませた。
分かってる、沙耶香なりに私のことを心配してくれてるんだよね。
だけど、私はやっぱり"あの人"にまた会える運命だって信じていたいんだ。
「石井(いしい)〜!」
「……は、はい!」
突然、名前を呼ばれて声が上ずった。
声をの方へと視線を向ければ、営業部長が自分のデスクから私を手招いているのが見える。
なんだろう?
まさか、この間の月末報告書にミスでもあった?いやいや、あれは主任にも確認してもらったし……
恐る恐る部長のデスクへと向かえば、部長はにこりと小さく微笑んだ。
ホッ、良かった。
怒られるわけじゃなさそう。
「部長、お呼びですか?」
「あぁ、実は企画部で新規プロジェクトが始動するらしいんだ」
「新規プロジェクト……ですか」
「あぁ。そこで、営業部からもプロジェクト専任の事務仕事を任せられる人を出して欲しいと言われていたのをすっかり忘れていてな」