※彼の愛情表現は、少しだけ重すぎる。
だけどはのんちゃんの瞳の色は、揺れることも曇ることもなかった。
それどころか、とっておきの宝物を見せる前みたいないたずらっぽい光が宿る。
「そうだと思って、これ準備したの」
「え?」
「全然売ってなくて、探し回ったんだから」
そう言いながらはのんちゃんが、地面に置いていたビニールに包まれたなにかを拾い上げる。
よく見ればそれは、カラフルな袋に入ったたくさんの手持ち花火だった。
気づかなかったけれど、まわりにはライターやバケツも置いてある。
「遅くなっちゃったけど、ふたりで花火大会、仕切り直ししよう」
「え……?」
「準備終わらせてから連絡しようとしたのに、まさか先に見つけられるなんて」
失敗したというように茶目っ気を滲ませて破顔するはのんちゃん。
その笑顔を前にした途端、感情や理性が切れて――俺は彼女をもう一度抱きしめていた。
「な、」
彼女のたじろぐ気配が体全体に伝わってきたけれど、腕を緩めることはできなかった。
「……ありがとう……」
きっと君は俺に幸せをくれる天才なのだと思う。
すると俺の肩に、下から腕を回すようにして手が添えられる。
抱きしめ返されたからか、さっきよりもずっと距離が近づいた気がした。
それから、笑みを含んだ柔らかい声が俺の鼓膜にそっと触れた。
「うん。私も、来年が来る前にあんたと花火見たかったから」